
石破首相の辞任表明「遅い」の声も… 東海3県でも割れた総裁選前倒し論争に終止符 自民党の“分断”は避けられるのか? “党内融和”と“信頼回復”へ課題残る

ギリギリのタイミングだったということなんでしょうか。9月7日、石破首相は急きょ会見を開き、辞任を表明しました。総裁選の前倒しをめぐり揺れていた自民党。東海地方でも“分断”の動きが出ていました。
総裁選めぐり割れた意見 東海地方の議員は…?

アメリカとの関税交渉に区切りがついたなどとして、辞任を表明した石破首相。突然の辞任表明の背景に何があったのでしょうか。
9月7日午後2時ごろ、首相会見の約4時間前。名古屋市内のホテルに次々と姿を現したのは、自民党・愛知県連の幹部たち。自民党が臨時の総裁選挙を実施するかどうか、週明けに決定する予定だったため、それを前に実施の賛否を決める会合が開かれていたのです。
そして、愛知県連は、全会一致で臨時総裁選の実施を求めることを決定。
三重県連も賛成を決めた一方、岐阜県連は反対する方針を決定し、東海3県で意見が割れる結果となっていました。

こうした状況の中、辞任を表明した石破首相。そのタイミングについては…
石破首相:
「臨時総裁選要求の意思確認に進めば、党内に決定的な分断を生みかねない。それは決して私の本意とするところではない」
このように説明し、「真の意味での解党的な出直しを成し遂げなければならない」と強調しました。

石破首相の辞任表明を、東海地方の自民党議員はどのように受け止めたのでしょうか。
三重1区の田村憲久衆院議員は、辞任表明のタイミングについて一定の理解を示しました。
三重1区 田村憲久衆院議員:
「国民のみなさんのことを一番に考えれば、(辞任表明は)このタイミングだったんだろうなと理解させていただきます。終盤はトランプ関税の問題もありました。ベターな方向性を出していただいたのは、国民の皆さま方に評価いただけるのかなと思います」

臨時総裁選の実施を求めない考えだった愛知10区の若山慎司衆院議員。進退は石破首相本人にゆだね、党内で争うべきではないとしていましたが、9月8日朝、街頭に立つと有権者から聞こえてきたのは…
愛知10区 若山慎司衆院議員:
「(辞任表明は)遅いよ、という声もかけていただいた。スピード感という点で有権者に不安を与えてしまったというのはありました」

三重4区の鈴木英敬衆院議員が見せてくれたのは、9月8日に提出する予定だった臨時総裁選を求める文書。体質や政策を一新するため、総裁選が必要だと訴えてきました。
三重4区 鈴木英敬衆院議員:
「新しい総裁に求めたいのは、1つは党内融和と一致団結。2つ目は世代交代につながる人材登用。国民のために、国民との意識のずれを直して体質を改善していく、そういう政策をリードできる新総裁を求めたい」
一方、新総裁について街の人からは「とにかく早く行動できる人になってほしい」(高校3年生)、「例えば小泉さんになったとしても、果たしてうまくいくのかなという不安があります」(80代)、「正直、次の総理がどうなるのか全然予想できない」(会社員)などの声が上がっています。
「分断防ぎたかった」石破首相 辞任決断の裏側

前回の総裁選からわずか1年というタイミングでの辞任表明。その理由について、石破首相は9月7日の会見で「自民党の分断を防ぎたかった」と話しています。
当初の予定では、自民党では9月8日に総裁選の前倒しでの実施を求める議員や県連が署名を提出するはずでした。つまり、石破下ろしに加担するかどうか意思表示をする日と言っても過言ではありません。
署名提出を実施すれば、前倒しを求める側と求めない側で分断されることに。実際、愛知・三重では前倒しを求める、岐阜は前倒しを求めないと、東海地方でも意見は割れていました。
しかし、石破首相の辞任表明で党の分断は避けられたかというと、必ずしもそうではないようです。
愛知県の自民党議員に話を聞くと「刷新感のある人が総裁になり新しいスタートを切りたい」とプラスに考える議員もいれば、「自民党のゴタゴタや権力闘争を支持者が冷ややかに見ているのではないか」と話す議員もいて、一連の石破下ろしについては選挙の大敗を石破首相に罪をなすり付けているように見えるとして、根本的な解決にはならないという声もありました。

次の総裁選候補に立候補を表明していたり、立候補するとみられているのは、高市早苗氏(64)、小林鷹之氏(50)、林芳正氏(64)、小泉進次郎氏(44)、茂木敏充氏(69)の5人。去年の総裁選と同じ顔ぶれです。
こうした動きを冷ややかに見ている有権者に対し、本当の意味で自民党が変わったというためには、政策や政治とカネの問題にどのように向き合うかなど、信頼回復への具体的な取り組みが求められます。
自民党幹部によると、自民党総裁選は党員投票を含めた、いわゆる“フルスペック”で行い、投開票は10月4日で最終調整しているという情報もある中、誰が総裁になるかということだけでなく、その過程や中身も重要になってきそうです。