誰でも簡単に5分で作れるドローンは段ボール製　名古屋大学発のスタートアップが開発

名古屋大学発のスタートアップが開発したのは、段ボールで作るドローンです。誰でも簡単に、5分で作ることができるというのですが、一体どんなドローンなのか、取材しました。

さまざまな形の段ボールが並ぶ名古屋市内の倉庫。段ボールを組み立てること約5分、段ボール製のドローンが完成しました。プロペラは付いていますが、段ボールにはガムテープが雑についています。

最高速度は時速120キロで、2時間以上飛び続けることができます。さらにドローンは、遠隔で操縦するので戻って来ることも可能です。

開発したのは、名古屋市にある「AirKamuy（エアカムイ）」。名古屋大学・機械航空工学科の卒業生を中心に、2022年に設立しました。同社CEOの山口拓海さんは、安価で大量生産に適しているところから、段ボールのドローンを作り始めたといいます。

飛行機のような形の固定翼ドローンは、長距離・長時間の飛行が特徴ですが、国産だと500万円以上します。この段ボールドローンは約30万円。固定翼機の特徴を持ちながら、低コストで運用できます。

また、納品される部品はたったの10個なので（試作機の場合）保管も省スペースで済みます。誰でも簡単に作れそうですが、特別な工夫が施されているそうです。

AirKamuy 小林翔吾CTO：
「翼の断面形を翼型というが、この翼型が空気の流れをしっかり捉えて、揚力がしっかり発生できるような形状に工夫しています。いろいろ試行錯誤している部分なので、企業秘密ですね」

鳥人間コンテストで優勝した経験を活かす

秘密を語ってくれた小林さん、実は2016年に「鳥人間コンテスト」で優勝した機体を設計していました。その技術力が開発へとつながりました。

AirKamuy 小林さん：
「かなり試行錯誤して、飛ばしたのは数百回を超えて開発しました」

エアカムイが、いま販路として目をつけているのが、日本での安全保障分野です。防衛省は、監視や偵察など防衛目的として今後、ドローンの調達を強化していく方針です。

防衛装備庁 装備政策課 射場 隆昌課長：
「無人機（ドローン）やAI（人工知能）は技術革新の最先端なので、非常に関心を持って導入を目指しています。スタートアップ企業がこういう分野に強いので、積極的に連携していくことは必須です」

さらに、段ボールドローンは、災害時の活用も期待されています。最大で1.5キロの荷物を載せられるため、救援物資を届けることが可能です。また本体には、カメラを設置する場所もあらかじめ設けられているため、行方不明者の捜索もできます。

日本経済新聞社 名古屋支社 川路洋助記者：
「この段ボールドローンは、使い捨てを想定していますが、使用後にモーター部分は取り外して再利用できます。災害時の物資輸送などで自治体からの引き合いも強く、製品化に向けてすでに名古屋銀行などから1億円を資金調達しています」

エアカムイは3年後に、売上高で10億円を目指しています。

AirKamuy 山口CEO：
「とにかく安いプラットホームになるので、研究開発に使いたい人や、民間でパトロール業務、おもちゃとして使いたいという声もあります。さまざまな声に応えられるよう開発を進めていきたいです」