
そもそも認定を知らない人も…名古屋市緑区の“絞り”で知られる有松地区「日本遺産」認定を文化庁が再審査へ


名古屋の有松の「日本遺産」の認定が再審査されることになりました。日本遺産の継続のポイントは、観光振興への取り組みです。
■取り組み次第では入れ替えも…
江戸時代の旧東海道の面影を残し、伝統の絞りの技を今に受け継ぐ「日本遺産」名古屋市緑区の有松。

しかし8月7日朝、名古屋市の広沢一郎市長は渋い表情を浮かべていました。そのワケは…。 広沢名古屋市長: 「ちょっと残念なんですけど、これをきっかけに再度課題を見直して、どうすればそこをクリアできるかをしっかり考えていきたいですね」 文化庁が、有松の日本遺産の認定を再審査することになりました。 日本遺産は、地域の文化財を観光振興に活用することを目的に、文化庁が10年前に認定を始めた、比較的新しい遺産認定です。

しかし、その数は全国で100カ所程度に限定されていて、観光振興への取り組み次第では入れ替えもあります。 広沢名古屋市長: 「理由は明らかにはなっていないんですけども、有松らしさをどう表現していくかとか、そういう点で課題があったのかなと考えています」
■専門家「十分ではないと判断された可能性」
有松地区では8月7日、夏休みですが、暑さのせいもあるのか、通りを歩く人の影はまばらでした。

秋田から来た人: 「本当に素晴らしいですね。こんなところがあるとは。古い町並みですごく趣があって」 有松が日本遺産ということを、知らない人もいました。 大学生: 「名古屋市にこういう江戸時代の町並みがあるのが新鮮で楽しいです。(Q.日本遺産なのは知っている?)知らなかったです」 特産・有松絞りの工房で働いている女性は…。

早恒染色の従業員: 「前からちょっと危機感を感じておりましたけど」 別の従業員: 「せっかく頑張って日本遺産になったんだから、継続していただけるのが一番ですよね」 なぜ有松が再審査になったのか。日本遺産に詳しい城西国際大学の佐滝剛弘教授に話を聞きました。 城西国際大学観光学部の佐滝剛弘教授: 「日本遺産ということを、どれだけ地域の人や観光客の方々に伝えているか。昔の宿場町だということではなくて、固有のストーリーを持っていることをどれだけ発信しているのか。もしかしたら『十分ではない』と判断された可能性があります」 再審査の結果は、年内にも出る見通しです。 広沢名古屋市長: 「有松自体の価値は、日本遺産認定の時に認めていただいていますので、それをどう活用して広げていくか、そこに多少課題があるのかなと考えていますので、しっかりその課題を受け止めてやっていきたいと思います。まずは地元の方としっかり協議をして、いかに活用したり発信したり、そういうあたりかなと思っています」
■福岡県の太宰府は認定取り消しに…各地の動き
日本遺産で重要なのが「ストーリー」で、地域全体で文化・伝統を盛り上げて観光客を呼び込むPRができるかがポイントです。

しかし、取り組みが不十分だと、認定が取り消されます。実際に、福岡県の『太宰府』は、認定が取り消されました。 神奈川県の『鎌倉』は「点数評価の対象」となっていて、ピンチに陥っています。大宰府も鎌倉も日本を代表する“歴史遺産”ですが、周辺地域との連携が足りないなどの理由があったということです。 城西国際大学の佐滝教授は「そもそも、『日本遺産を知らない』という根本的な問題もあり、一方的に文化庁に言われたから対策をすることもいいかどうか、考える機会に」と話しています。

今回、日本遺産の認定が“再審査”となったのは、有松だけではありません。岐阜県と長野県の「木曽路」、そして三重県の「鳥羽・志摩」も対象になりました。 日本遺産は“歴史的価値”よりも、“地域振興”や“観光開発”の方が重視されている“遺産”になっているようです。