妊娠9か月の女性がはねられ死亡 「娘も被害者として認めて」 事故後に生まれた赤ちゃんには障害が 直面する“法律の壁”

ことし5月、愛知県一宮市で妊娠9か月だった女性が車にはねられ死亡し、帝王切開で生まれた赤ちゃんには重い障害が残りました。赤ちゃんを「被害者」と認めてほしい、遺族の願いです。
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ことし5月、一宮市で起きた交通事故。妊娠9か月だった研谷沙也香さんが乗用車にはねられ亡くなりました。お腹にいた赤ちゃんは事故後、帝王切開で生まれましたが、重い脳障害が残り意識のない状態が続いています。亡くなった沙也香さんは、お腹の子の誕生を心待ちにしていたといいます。
(沙也香さんの夫・研谷友太さん)
「一度流産も経験しておりますので、ようやく安定期にも入ってきて(出産が)目前でしたので、本当に楽しみにしていました」
夫の研谷友太さんは、生まれた娘を日七未(ひなみ)ちゃんと名付けました。沙也香さんが「すごくかわいい名前だね」と喜んでくれた名前です。
(友太さん)
「妻が一度も子どもを抱けずに逝ってしまったのは本当に無念ですし、成長を見たかっただろうなと思います」
「娘を被害者として認めてほしい」
事故から3か月。友太さんがいま、直面しているのは「法律の壁」です。
事故を起こし過失運転致死の罪で起訴された、児野尚子被告(50)の起訴内容に「被害者」は沙也香さん、ただ一人。日七未ちゃんの名前はどこにもなく、被害者として認められていないのです。
(友太さん)
「生まれてきてくれて、ただ障害を負ってしまっている。今も懸命に生きてくれているのです。そんな状態で生きている娘が、被害者として扱われないというのは、やっぱり違和感しかない」
被害者として認められない理由は、明治時代に制定された刑法にあります。専門家によると胎児は「人ではない」と解釈され、被害者になれないというのです。
(友太さん)
「本当に『生きてくれてありがとう』という気持ちしかなくて、かわいいんです。娘がいるからこそ、生きてくれているから頑張れる」
友太さんはいま、育児休暇を取り、日七未ちゃんに付き添う傍ら「娘を被害者として認めてほしい」とオンラインで署名活動をしています。
署名活動の賛同者は既に11万人を超え、署名はきょう、名古屋地検に提出されました。
日七未ちゃんが脳にダメージを負った経緯など…追加の捜査
こうした中、名古屋地検が日七未ちゃんへの過失運転傷害罪の立件が可能かどうか、追加の捜査を始めることが新たに分かりました。今後、脳にダメージを負った経緯など追加の捜査を行い、立件できるかを慎重に判断するものとみられます。
一方、きょう名古屋地裁一宮支部では、児野尚子被告の初公判が開かれました。松葉杖姿で法廷に現れた児野被告は、「研谷さんの尊い命を奪ってしまいました。事故の責任は全て私にあります」などと起訴内容を認めました。
検察側は証拠として「なぜ車が斜めに向かったのか思い出せない」「ぶつかってから初めて存在に気づいた」など児野被告の供述などを示しました。裁判後に友太さんは…
(友太さん)
「これから始まっていくなという思い。初めて被告人の顔を見ましたけど、怒りはおさまらないですし、事故の真実を明らかにしていっていただければ。娘に関してはスタートラインに立てていない状態で、起訴してもらわないと何も始まらない状況。起訴を検討している中での追加捜査だと思う。こちらの意向、皆さまからいただいている声が、確実に届いているのかなと」