
滝藤賢一さん「彼のような俳優になりたい…」被災した老舗醤油蔵を職人技で復活 “どえらい大工”の生き様


愛知県長久手市にあるジブリパークの「サツキとメイの家」などを手掛けた大工の中村武司(なかむら・たけし 60)さんは、ボルトを使わずに家を建てる伝統工法を貫いている。今、多くの住宅が「プレカット」と呼ばれる機械加工の木材に頼る中、失われつつある技術を守り抜く、その姿を追った。
■機械が管理する「プレカット」に頼らない…伝統工法を守る名工
中村さんは、愛知県長久手市のジブリパークで「サツキとメイの家」や「地球屋」など、様々な木の建物を手がけた大工の親方です。

ボルトなどの金物を使わず、木と木を組み合わせる伝統工法で家を建てる大工で、使う木材は工房で一本一本、長さを測り、手刻みで加工します。

中村さん: 「新築の住宅の90数%はプレカットで、コンピューターで管理された自動で加工していく機械。手刻みで寸法を大工の頭の中で整理したものが、立体になって具現化していくというのが、木造住宅の一番真骨頂なので」
■今や“絶滅の危機” 多くの大工がプレカットを組み立てるだけ、という現状
愛知県飛島村の「東海プレカット」では、大工が手で刻んだ場合は1カ月以上かかる家一棟分の木材を、わずか1日で加工することができます。

東海プレカットの藤田大係長: 「スピード、効率よく同じものがたくさん作れるのがメリットかなと。一般住宅とかそういったものは普通の機械でできるんですけど、そこからの枠を超えて特殊な物件になってくると、大工さんの手で刻まないとやれないことは多々あります」 今、多くの大工は、こうしたプレカットの木材を現場で組み立てるだけとなっています。 中村さんのように、手刻みの昔ながらの方法で家を建てる大工は、絶滅の危機ともいえる状況です。
■「使えるものは使う」能登の被災地を復活させた職人技
能登半島地震で1万5000棟が被災した石川県七尾市。中村さんは、創業100年を迎える「鳥居醤油店」の復旧工事をしました。

中村さんは「腐っていなければ使えるから置いておいて」と指示し、元々使っていた木を再利用しました。 倒壊の恐れがあった醤油蔵は、木造の大工ならではの職人技で復活しました。

中村さん: 「被災して潰れたような家でも、たくさん使えるような部材は残っているので。使えるものは使っていく、直していく。直す過程も楽しいし、直せたという実感が充実感を持って喜びとして感じられるので。こういう仕事をしていてよかったなと」
■伝統技術を守り抜く“どえらい大工”に滝藤賢一さん「中村さんのような俳優に」
中村さんの木造伝統工法の家づくりに対する熱い思いを描いたドキュメンタリー「どえらい大工」が、東海テレビで2025年3月30日午後1時から放送します。 ナレーションを務めた俳優の滝藤賢一さんは、「伝統が受け継がれていかないと、どんどん失われてしまう。見て知ってもらうことが大事」と話します。

滝藤さん: 「自分で寸法を測って木を刻むのが大工さんだと思っていたんですけど、そういう方がどんどんなくなっていっていて、伝統の工法が若い子たちに伝承されていかないのは悲しいですよね」

滝藤さん: 「僕がどの道を選べるか、自分で選んでいいと言ったら、中村さんのような俳優になりたいですよね。こだわりをもって、古いって言われても、そんな時代じゃないって言われても。通ずるものがどの世界にもあるのかなと思います」