飛んで!高速で!ロボットで! 県境をまたいでイチゴを運ぶ大実験 高騰する輸送費の課題解決を目指して
イチゴをドローンや高速バス、配送ロボットで運ぶ大実験が、岐阜県と愛知県の県境をまたいで実施されました。岐阜県ではドローン、愛知県では配送ロボット、両県をつないだのが高速バス。高騰する輸送費という課題解決を目指して、それぞれの配送手段が大活躍しました。
1番手『ドローン』は、岐阜県内の輸送を担う
岐阜県可児市の農園「中電ウイングファーム」で収穫しているのは、クリスマスシーズンに欠かせないイチゴ。
保冷ボックスに詰め込まれたイチゴが向かった先は、普段乗せられて運ばれているトラック・・・ではなくドローン!
実は、ちょっと特殊な方法でイチゴを販売店舗まで運ぶ実証実験が行われていました。
中電ウイング・近藤貴博さん:
「物流コストが2024年問題以降、2~3割高騰しています。そこの課題に向き合いたいというところで、新たな配送の仕組みを考えました」
燃料費や人件費の上昇で、年々輸送費が高騰しています。
このままではイチゴの価格にも影響が出てしまう、と危機感を抱いたといいます。
愛知県・岐阜県などと合同でコスト削減を目指し、複数の方法を試すことに。
今回の実験は、きちんと運べるか、課題はどこか見極めようというものです。
ドローンは法律上、民家の上を飛べない・・・。ということで今回は、付近を流れる川の上空を飛行するルートを選びました。
バランスを崩さないよう、ドローンは水平に飛び立っていきます。
2番手『高速バス』は、愛知県と岐阜県をつなぐ
約20分後、たどり着いた場所は岐阜県可児市の駐車場。
ドローンによって慎重に運ばれたイチゴは、関係者の手により高速バスの貨物用の荷台に乗せられました。
これなら、輸送するのに人手はかかりません。
ただ、イチゴは荷台にそのまま置かれてしまいましたが、衝撃は大丈夫なのでしょうか。
バスに乗せられたイチゴは、およそ1時間20分で名古屋・栄に到着。
販売店舗までは、残り500メートルです。
最後の配送を担うのは『自動配送ロボット』
やってきたのは自動配送ロボット。その名も「デリロ」!
イチゴはバスのスタッフによって乗せ替えられ、この配送ロボットで販売先を目指します。
デリロ:
「行ってきます 発進します」
栄の街に突如現れた真っ赤なロボットに、街の人たちはスマホで写真を撮るなど興味津々です。
人通りの多い栄の街。しかし、デリロはしっかり信号で停まったり歩行者の間を縫うようにして、すいすい進行していきます。
そんなデリロの動きを、離れた場所で見守っている人がいました。
中電ウイング・立石周平さん:
「ロボットには、遠隔監視者が必要になっています。自動走行しているロボットに対して、私が遠隔操作で遠くから見ています」
急な飛び出しがあった時の緊急停止、距離の長い横断歩道を上手に渡れるかなど、安全に配達が完了するように立石さんが遠隔監視で目を光らせていました。
「こんにちは」とあいさつをしながら人混みの中を進んでいくデリロは、実に表情豊か。
通行人に通路をふさがれて通れないときには涙目になって、「すみませんが道をお譲り下さい」と告げます。
デリロを見た人:
「かわいい感じですね」
ところが、横断歩道の前で青信号にもかかわらずデリロが止まってしまいました。
なぜかデリロは進みません。
もしかして故障かな…と思ったらようやく進み出しました。
中電ウイング・立石周平さん:
「一度青信号を見送って赤に変わり、次の青になった時に渡ります。青信号がいちばん長い状態の時に渡れるように、一時停止しています」
可児市を飛び立ってから、約2時間半が経過。
ついにイチゴが目的地の販売店に到着しました。
果たして、イチゴはつぶれずに到着できたでしょうか……。
販売店のフルーツ売場でさっそくイチゴ取り出すと……。
パントリーマルエイガレリア・伊勢田美由紀店長:
「すごくきれいです。全然痛んでないので驚きました」
一粒ずつ区切られた特殊なパックと衝撃を抑えられる保冷ボックスを使うことで、つぶれることなくイチゴを配送することができました。
中電ウイング・近藤貴博さん:
「(無事にイチゴが届き)ホッとしました。これまだ第一歩なんですよ。この配送システムを実用化できないと意味がないんで。これから挑戦は続きます」