人里に降りてきた「クマ」 目が赤いオオカミロボット「モンスターウルフ」が撃退 ゾーニングを守る仕組み
11月30日に秋田県のスーパーにクマが侵入して問題になりました。そこで今、注目されているのが野生動物と人間が暮らす地域をわけて管理するゾーニングです。ゾーニングに役立つちょっと変わった装置を紹介します。
都市部に出る「アーバンベア」が流行語になるほど、近年クマの出没が増えています。野生動物による農作物被害も深刻で、全国の被害額は150億円以上。そんな中、太田精器が開発した「モンスターウルフ」が注目されています。
太田精器は札幌近郊の奈井江町にある金属の精密加工会社です。社長の太田裕治さんは、新事業としてLED照明への参入を試みましたが、挫折したといいます。そのころ、地元での獣害に困っている話を聞き、LEDで動物を追い払う装置の開発を思いつきました。
野生動物の撃退の仕組み
「モンスターウルフ」は赤外線センサーで動物を感知し、最大90デシベルの音で威嚇します。音の種類は60以上で、オオカミや人の声などが含まれます。同時にLEDライトが青い光を強く点滅させ、動物を嫌がらせる効果があります。
2011年に、光と音のみで動物を威嚇する装置「モンスタービーム」。撃退の効果は確認されましたが、販売に苦戦しました。その後、大学教授から「野生動物の天敵はオオカミ」との助言を受け、オオカミの姿に近づけた「モンスターウルフ」を2018年に販売開始したのです。
太田精器 太田裕治社長:
「シカ飼育場で実験したら、形でも逃げることが検証されました。この形も非常に大事」
全国での導入実績と評価
「モンスターウルフ」は発売から6年で全国に250台ほど販売されています。設置費用込みで55万円、レンタルのリピート率は9割以上と高評価です。北海道滝川市では、ヒグマの目撃情報が相次いだため、2台を導入。地域住民からも「安心感がある」との声が寄せられています。
さらなる進化と未来の展望
太田精器は、スズキなどと共同開発した「ウルフムーバー」を開発中。より広い範囲での撃退を目指し、自動運転も視野に入れています。また、鳥を地上から撃退する「モンスターイーグル」も開発しています。
日本経済新聞社 札幌支社 浜野 琴星記者:
「北海道では野生動物とヒトの暮らす場所を分ける“ゾーニング”の重要性が訴えられています、野生動物による被害を殺さずに防ぐことができるモンスターウルフは、ゾーニングのために有効な装置といえるでしょう」
太田精器 太田社長:
「(今後は)野生動物が出たら自動的に追いかけていく、一定の時間にパトロールする。そんなシステムを考えています」