ご当地サイダー開発・製造の駆け込み寺 年間150種類を受注 強みは少量での生産と提案力
観光地などで見かける名産品や文化にちなんだ「ご当地サイダー」。その企画から製造、販売までを担う企業が佐賀県にあります。北は北海道、南は沖縄から注文が殺到するというこの企業、人気を集める裏にどんなノウハウがあるのか、取材しました。
年間約150種類のサイダーを製造
太宰府天満宮に祭られる菅原道真公も愛したとされる、梅を使った瓶入りサイダー。地元の農業高校の生徒が収穫した梅を使っていて、地域を盛り上げようと太宰府市と西日本鉄道などが開発しました。
そんな梅サイダーを製造したのは、佐賀県の友桝(ともます)飲料です。展示されていたのは、手がけたサイダーの瓶の数々。
友桝飲料 取締役 原田裕介さん:
「年間で150種類ほど生産しています。オーダーメード商品の駆け込み寺。何かしら商品にできます」
友桝飲料は、20年間で売上高が約40倍と急成長。売り上げの7割は大手スーパーや量販店向けの無糖炭酸水ですが、ご当地サイダーの企画・製造では知る人ぞ知る企業なのです。
年間開発数、ほぼ2日に1種類という超ハイペースのビジネスはなぜ可能なのでしょうか。
規模の小ささを強みにした、小ロット・多品種の製造
理由の1つは、生産ラインにあるといいます。規模の小ささを逆手に取ったのが、ご当地サイダーのビジネス。大手飲料メーカーの製造設備は数十万本単位での大量生産向けです。一方、友桝飲料は数千本単位という少量で多品種生産に向いていました。
大手めんたいこメーカー「やまや」は、ノンアルコール飲料を商品化するのは初めて。そこで、友桝飲料の門を叩きました。
やまやコミュニケーションズ 松浦優太さん:
「まずは何をすれば良いのか分かりませんでしたが、友桝飲料に相談をしてスムーズに商品化できました」
クライアントの要望をカタチに
友桝飲料の商品開発で、まず顧客は15項目の質問シートに答えます。くみ取ったニーズから、コンセプトや求める味をあぶり出していきます。実際にやまやは「果汁感をお客さんに楽しんでもらうため、できるだけ果汁を増やしてほしい」と要望を伝えました。
初期の試作品は、ゆずやヒュウガナツの苦みが強かったため、友桝飲料は少し果汁を減らすようにアドバイス。やまやがデザインしたかわいらしいラベルも、友桝飲料のアイデアです。ネコ関連グッズの市場が広がっている中、ネコ好きの需要も取り込む狙いです。製品は半年ほどで完成しました。「(友桝飲料には)親身に相談にのってもらい、本当に感謝しかない」と松浦さんは話します。
友桝飲料では、ラベルのデザインやPR戦略なども請け負っています。こうして商品開発経験に乏しい自治体や観光協会でも、短期間で製品化ができるのです。
友桝飲料 取締役 原田さん:
「開発を重ねているので、今までの経験に自信と自負はあります。今は『友桝飲料だったら開発してもらえる』と思ってもらえているのでは」
日本経済新聞社 佐賀支局 長谷川聖子支局長:
「友桝飲料はM&Aで取得した技術で凍らせて食べるアイスやパウチ飲料などオーダーメード製品の幅を広げています。共同開発のこれまでのノウハウとM&Aで得た新しい技術で海外など今後も活躍の場を広げていくのではないでしょうか」