参院選 “政治とカネ”の問題は 愛知で衆院議員逮捕、岐阜は参院議員が在宅起訴 候補者と各党の考え

自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる問題から端を発した“政治とカネ”の問題。候補者と有権者はどのように考えているのでしょうか。
東海地方では、この問題をめぐって現職国会議員で唯一の逮捕者が。
衆院愛知3区を地盤にし、2021年の衆院選で比例で復活当選した自民党(逮捕後に除名)の元衆院議員、池田佳隆被告。
派閥から受け取ったとされる約4800万円について、収支報告書に記載をしなかった政治資金規正法違反の罪で去年1月、起訴されています。
さらに、参議院の岐阜選挙区選出の大野泰正議員は、事務所の会計責任者らと共謀し、約5100万円の収入について、収支報告書にうその記載をした政治資金規正法違反の罪で去年1月に在宅起訴されました。
その後、自民党を離党して無所属に。
今回の参院選に立候補するのか注目されていましたが…。
「無所属になってからはどんなに頑張っても、今までの80%位のパフォーマンスになってしまい、その事が議席を預かる者として何より辛かったです」(大野泰正議員のHPより)
公示日の10日あまり前になって「立候補しない」と表明しました。
2期12年にわたって参議院議員を務めた現職が不在の中で行われる、今回の参院選。
岐阜県の有権者に話を聞くと…。
Q.「政治とカネ」は意識する?
「やはりまだ解明されていないじゃないですか。うやむやになっているままだから、そのまま済ますというのは、たとえ時間がかかったとしても意識は変わらない。今だけ金だけ自分だけという体質がおかしい」(70代男性)
一方で、争点としての“政治とカネ”への意識は薄れているという人も。
「関心はあるけど、私たちはそういう世界のことがあまりわからないから」(70代女性)
Q.大野議員が在宅起訴されたことは?
「どうかな…そこはもう薄れていましたね、そういうところよりも違うところに目を向けています」(40代女性)
「政治とカネ」の問題について候補者の考えは

去年の衆院選でも争点の1つとなった「政治とカネ」の問題。
週末、岐阜県内各地を駆け回った候補者に考えを聞きました。
現職不在、改選数1の岐阜選挙区には、届け出順に立憲民主党の新人・服部学氏(54)、参政党の新人・瀬尾英志氏(40)、自民党の新人・若井敦子氏(53)、共産党の新人・三尾圭司氏(49)、無所属の新人・伊藤あゆみ氏(54)、諸派の新人・小池裕之氏(31)の6人が立候補しています。
自民党から立候補する新人、若井敦子氏(53)。
「いま首都圏に人やモノや経済が集中しています。これが進行することによってどうなるか。もうひとつ進行するものがある、地方の過疎化です。なんとしても歯止めをかけていかなければならない」(若井氏)
週末の演説では、“政治とカネ”の話題に触れることは少なかったものの…。
「私たちがその言葉を真摯に受け止めて、これからどうやって行動をとっていくか、というところにかかってくると思うので」(若井氏)
「クリーンな政治を行い、信頼回復に努める」としています。
立憲民主党の新人・服部学氏(54)は、今回の参院選でも少数与党に追い込むことで金権政治と決別するべきだと訴え続けます。
「現職の方は何ら説明責任を果たされず、今回は出馬をされない。企業・団体献金の禁止、この法案も全く手付かず。自民党がこれから先も金権政治を続けていく、そういうつもりなんだと思います。こんな政治を許してはいけない。保守王国といわれているこの岐阜県、変えていきましょう。そうすれば日本全体が変わっていきます」(服部氏)
参政党の新人・瀬尾英志氏(40)は、企業・団体献金を禁止し、自由な政治の実現を主張しています。
「私たちが整えているのは企業・団体献金の受け取りの禁止を実行している。結党当初の5年前から、そこがやはり政策をゆがめてしまうし、お金をもらうと法律をつくったり変えたりしてお返しをしないという体制がおかしいのではないかと考えている。だからすでに企業・団体献金を受け取らない体制を構築している。それによって他の政党にも広がっていくことで政治が良くなると思う」(瀬尾氏)

共産党の新人・三尾圭司氏 (49)は、共産党が政党助成金を長年受け取っていないことを強調し、政治改革として、企業・団体献金そのものの禁止を訴えます。
「この岐阜県の中で行われてきた政治、“裏金”政治と呼ばれるものだが、この選挙でおかしな世の中をちゃんと切り替えていこうと訴えているのが共産党。去年の衆院選では自公政権を少数与党に追い込むことができた。参議院もちゃんと少数与党に追い込むんだと、そういった選挙にしよう」(三尾氏)
無所属の新人・伊藤あゆみ氏(54)は、政治の不透明な金を明らかにし、政治資金や企業献金の禁止を訴えています。
諸派の新人・小池裕之氏(31)は、収支報告書をSNSで公開するなど、「金の使い道の見える化」を主張しています。
東海地方には「不記載」の現職2人が立候補

各候補が「改革」を訴える、「政治とカネ」の問題。記憶に新しいのは、自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる問題です。
前回の衆院選でも大きな争点のひとつになりましたが、今回はどうでしょうか。
東海地方では、収支報告書へ収入の不記載があった現職2人が立候補しています。
愛知選挙区です。改選数4の愛知選挙区には14人が立候補しています。
このうち、自民党の現職・酒井庸行氏(73)は、2019年からの3年間で収支報告書に派閥からの収入58万円の不記載がありました。
今年1月には参議院の政治倫理審議会に出席し「とにかく私はノルマを達成するために私も特に事務所の担当者も必死になってやってきた。還付については認識していなかった」などと説明しました。
“政治とカネ”をめぐる問題、「不記載」の当事者でもある酒井氏にこの週末、話を聞きました。
Q.選挙戦で「政治とカネ」について聞かれることは?
「ないとは言わない。あるけれどもそれはもう明白にきちんと説明することはしてきたし、もしあるならばまたきちんと説明をする」(酒井氏)
Q.説明責任は果たした?
「政倫審も出て、きちんと話をしましたし、その責任は果たしたと思う」(酒井氏)

改選数1の三重選挙区には4人が立候補しています。
このうち、自民党の現職・吉川有美氏(51)は、2020年からの3年間で収支報告書に240万円の不記載がありました。
今年3月には、参議院の政治倫理審議会に出席し「2期目の途中で派閥に入り、パーティーに関することはすべて秘書に任せていたので、私自身はノルマがあること、ノルマを超えた分については還付の仕組みがあることを全く知らなかった」と話しています。
吉川氏にも、この週末「政治とカネ」について話を聞きました。
「選挙戦の中で、どなたから言われたことは一度もなくて、それはおそらく説明責任をことあるごとに果たしてきたということもあるのかなと思っておりますが、とはいえ襟を正してやっていかなければいけないことですので、また機会があればことあるごとにきちんと説明をして誤解があるところはそうではありませんと解いていけたらと思っている」(吉川氏)
各党の政治改革について

自民党派閥の”政治とカネ”を含む「政治改革」について、各党はどのような政策を打ち出しているのでしょうか。公約を見ていきます。
まずは、政治資金をめぐる問題がこの数年で大きく取りざたされた、自民党です。
【自民党】
■改正政治資金規正法に則り、政治資金の透明化と厳正なコンプライアンスを一層推進する
■「令和版政治改革大綱」の策定
を挙げています。
自民党以外の政党の公約です。
【立憲民主党】
■企業・団体献金の禁止
■政治資金の世襲制限
【公明党】
■カネの流れの透明性を高めた上で規制を強化
【日本維新の会】
■企業・団体献金の禁止
■企業・団体からのパーティー券購入を禁止
【共産党】
■企業・団体によるパーティー券購入を含む、企業・団体献金の全面禁止。
【国民民主党】
■政治資金の透明性強化及びDX化
【れいわ新選組】
■関係者の証人喚問を行い、裏金問題を徹底究明
【参政党】
■政党・政治団体に対する企業・団体献金を全面禁止
【社民党】
■政治資金パーティーや企業・団体献金は全面禁止
【日本保守党】
■資金管理団体の「世襲」禁止