「マイナカード2025年問題」でマイナ保険証の有効期限切れトラブル増加中 更新時期のズレに注意

マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」を巡り、医療機関でトラブルが相次いでいます。愛知県内の歯科クリニックを取材しました。

あま市にある「すぎとう歯科クリニック」です。このクリニックでは、患者の4人に1人ほどがマイナ保険証を利用しています。読み取り機器で受け付けをしますが…
すぎとう歯科クリニック 杉藤庄平院長:
「(マイナ保険証を)途中で(機器から)取り出してしまう人も結構いる。それもトラブルのもとになる」
病院職員たちを困らせている“黒丸”

マイナ保険証の読み取りの手順でつまずく人も。さらに、職員たちを困らせているのが“黒丸”です。
すぎとう歯科クリニック 杉藤庄平院長:
「受付の画面ですが、昨日はこういう黒丸が出てしまう人が2人いた」
マイナ保険証から読み取った患者の名前の一部が黒丸で表示されていました。
すぎとう歯科クリニック 杉藤庄平院長:
「『高』という字でも『はしごだか』もあるので、いろいろな書き方がある字が(文字化けが)出やすい」
初診の患者の場合、問診票を確認して職員がパソコンにデータを打ち込み直す必要があります。院長によると、トラブルは多い時で1日3件ほど起きるということです。
全国保険医団体連合会が全国の医療機関を対象に行った調査によると、2024年12月以降、マイナ保険証に関するトラブルを経験したと回答した医療機関は87.5パーセントにのぼっています。
トラブルの主な要因はマイナ保険証の“有効期限切れ”

「マイナ保険証」のトラブルの中でも、大幅に増加したのが「有効期限切れ」です。実はマイナンバーカードには有効期限が2種類あります。カード本体は10年、カードに搭載されているマイナ保険証を使うために必要な電子証明書は5年で、それぞれ更新する必要があります。
特に電子証明書の有効期限については、カードの記載欄が空欄で、マイナポータルで確認して、自分で記入しなくてはいけないため注意が必要です。

2016年のマイナンバーカードの交付開始や、2020年9月に始まったマイナポイント事業をきっかけに取得した人は、2025年度有効期限が切れるため更新が必要で、対象になるのは2024年度の3倍の約2800万件と試算されています。これがいわゆる「マイナンバーカードの2025年問題」です。
全国保険医団体連合会によると有効期限切れによるトラブルが起きたのは、前回の調査では回答があった医療機関のうち14.1%だったのに対し、今回は31%と2倍以上に増えています。
有効期限が切れたら

マイナ保険証の有効期限が切れたらどうなるのか。有効期限が切れた月の末日から3カ月間は、マイナ保険証で受診することができます。3カ月を経過するとマイナ保険証は利用できませんが、マイナポータルの資格情報とマイナンバーカードの提示で保険診療を受けられます。
また手元に有効な従来の健康保険証がなく、マイナ保険証の更新を行わなかった場合と、75歳以上の場合は「資格確認書」が交付され、提示すれば受診可能です。
ただ、注意が必要な事があります。マイナ保険証の資格取得者に2024年9月以降に交付された「資格情報のお知らせ」です。「資格確認書」とは違い、マイナカードがなければ、単体では受診ができません。

マイナ保険証の有効期限切れによるトラブルについて、南山大学の実原隆志教授に話を聞きました。
南山大学 実原隆志教授:
「(従来は)保険証の更新作業を今までしてこなかったところが、知らないうちにマイナ保険証の期限が切れている背景にあると思う。免許証やパスポートであればそろそろ更新かなと気をつけるが、保険証はあまりそういうことに気をつける習慣は無かったと思うので、その辺の不慣れな点はある」
政府のマイナンバーカードの普及の進め方にも問題があると言います。
南山大学 実原隆志教授:
「今までのカード(保険証)を使えないようにして、マイナンバーカード(を持たせるよう)にして、マイナンバーカードを持たない人のために紙(資格確認書)を配るということは非常に一貫性がない印象」
南山大学 実原隆志教授:
「せっかく使えば便利なカードなので、何も印象が悪くなるようなことをしなくてもいいのではと思う。つまり、マイナンバーカードが『ないとできない』ではなく、『あればできる』ということが増えていけば自然と広まっていくと思うので、政府はそういう姿勢で利用促進を図っていけばいいと思う」
※実はうかんむりに貫