「『接種したらウイルスをばらまく』はデマ」名古屋市で導入率1%未満の新しいコロナワクチンを解説

現在、新型コロナワクチンは65歳以上の高齢者と、基礎疾患のある60歳から64歳の人を対象にした定期接種が行われています。期間と自己負担額は自治体によって異なり、名古屋市の場合は2025年1月31日までで自己負担は3200円です。
「レプリコンワクチン」とは

名古屋市の予防接種に関する情報サイトで調べたところ、市内で新型コロナワクチンの定期接種ができる医療機関と老人保健施設は全部で1015カ所。接種の対象になっているのは5種類ですが、このうち1種類のワクチンは、その1%にも満たない10カ所でしか扱っていないことが分かりました。
それは今回の接種で新たに登場したMeiji Seika ファルマの「コスタイベ」です。「次世代mRNAワクチン」や「レプリコンワクチン」とも呼ばれています。コロナに対抗する基本的な仕組みは、ファイザーやモデルナなどの今までのmRNAワクチンと同様です。
少量のワクチンでも効果が長く続くと期待される

ワクチンを注射すると、mRNAは病原性がないコロナウイルスの1部分を体内に作らせます。体はこれを異物と認識して抗体ができ、コロナへの免疫を得ます。レプリコンワクチンの違いは、体内に入ったmRNAが一時的に自己増幅すること。そのため少量のワクチンでも効果が長く続くと期待されています。
このワクチンについてSNSでは、「このワクチン、日本以外では未認可らしい」とか、「ワクチンの成分が体内で増幅!? 接種したら周りにウイルスをばらまくらしい」といった声が。
ヨーロッパでは申請が進み、アメリカやベトナムは申請準備中

Meiji Seika ファルマに「日本以外では未認可」について取材したところ、海外での販売はほかの会社が担うとしつつ、ヨーロッパでは申請が進み審査は最終段階といいます。アメリカや治験を行ったベトナムでも申請準備が進んでいるという回答を得ました。

「ワクチン成分の増幅」と「接種したらウイルスをばらまく」については、愛知県医師会の柵木充明(ませき・みつあき)会長に見解を聞きました。
「mRNAの自己増幅は一時的なので心配する必要はない。またmRNAが作るのはウイルスそのものではないので、『ウイルスをばらまく』は完全に間違い」と柵木会長は話します。
では、接種しても安全なのでしょうか。
柵木会長は「まだ中長期的な影響が分からない。新しいワクチンなので、今後はワクチンの副反応などを注視する必要がある」としています。
医療現場からは「需要があるか心配」の声も

ワクチン接種の医療現場はどう考えているのか、レプリコンワクチンの導入を見送った「柊みみはなのどクリニック」の内藤孝司先生に聞きました。
内藤先生によると、「ほかのワクチンより効果が長いと聞くので興味はある」としつつ、「Meiji Seika ファルマのレプリコンワクチンは1瓶で16回接種ができるが、開封後は一気に使い切る必要がある。世間でネガティブなイメージが広がっている中、需要があるかどうか心配」という理由で、今回は導入しなかったそうです。内藤先生は「今後の評価を気にしながら導入を検討したい」としています。

ここまで聞くと不安が残るかもしれませんが、厚生労働省が10月24日に発表した統計によると、新型コロナが5類に移行した2023年5月から1年間の新型コロナによる死亡者数は3万2567人と、インフルエンザで亡くなった人の約15倍です。特に高齢者や基礎疾患がある人は重症化と死亡のリスクが高くなります。
柵木会長は「ワクチンを打つメリットやデメリット、またワクチンの種類ごとの特徴を知った上で自分を守るための最善の方法を選んでほしい」と話していました。