
駅の高架下で50年…老舗食堂で愛されるソウルフード『からあげ丼』地元から観光客まで魅了する“秘伝のタレ”


三重県伊勢市の「まんぷく食堂」は、名物のからあげ丼が看板の大衆食堂です。秘伝のタレと卵でとじた一杯は地元の学生から観光客までを魅了し続けています。
■創業50年の大衆食堂…看板は伊勢のソウルフード「からあげ丼」
三重県伊勢市の近鉄「宇治山田駅」の高架下・宇治山田駅前横丁にある「まんぷく食堂」は、開店とともに満席になる人気店です。

店内の壁一面には、ポスターや新聞記事が貼られています。 店主・鋤柄大平さん: 「地元の人の活躍というか、ファンとして貼っていった」

2代目店主の鋤柄大平さん(48)は、地元の球児やミュージシャンを応援したい思いから新聞記事やポスターを貼るようになったといいます。

48年前に誕生した名物「からあげ丼」(850円)は、多い時は1日400杯売れたこともある大人気メニューです。一見どこにでもあるメニューにも見えますが…。 客: 「からあげ丼ってどこにでもあると思っていたけど、食べてみたらここにしかない味」 別の客: 「よくありそうな感じでちょっと違う。食べたことのないおいしさ」

多くの常連に愛され続けているからあげ丼の生みの親は、大平さんの父・廣彦さんです。 大平さん: 「両親が『他にはないメニューを発明したい』と研究して作ってくれた」

客を喜ばせたいという思いから、試行錯誤を重ね独自の味を生み出したといいます。今も時々店を手伝う母・鈴子さん(76)は、「開発当時は、からあげ丼がここまで売れるとは思わなかった」と話します。
■常連と観光客に愛される味
秘伝のタレに漬け込んだ鶏肉を、外はカリッと中はジューシーなからあげに。

そして、ダシの入った専用の鍋が煮立ったところで卵を投入。 大平さん: 「できた当時はからあげ丼ってなかった」 当時は、からあげを卵でとじるスタイルが斬新で、しかもかつ丼よりもお値打ちに食べられると地元の学生たちを中心に支持を集め、お店の看板メニューになっていったといいます。

大平さん: 「昔メニューがいっぱいあった時もからあげ丼が9割出ていたので、思い切って絞りました」 2024年からあげ丼メインのメニューに変更しました。 週1回名古屋から訪れる常連客: 「全国にからあげ丼ってありますけど、この卵とかニンニクとか魅力あります」

「よくわからないけどおいしい」。その不思議な感覚が人気を集め、今では外国人観光客も訪れます。

外国人観光客: 「おいしい。私の夫はからあげが好きで、私たちはからあげを食べるために来た」
■「お客さんが作ってくれた店」…二代目店主の挑戦
「まんぷく食堂」の魅力は、からあげ丼だけではありません。お店との付き合いが10年以上という地元でバンドをやっている人たちは…。 客: 「人柄がやはり大きい。うちらが路上で楽器を弾いている時に、『やる場所がないなら俺の店でやってくれ。地元の文化は守りたい』と言ってくれた」

地元を愛する大平さんは、バンドのためにお店をライブ会場として提供したのです。 大平さん: 「この店自体は母親父親の代から含めてお客さんが作ってくれた店」

客の協力のおかげで今があるという大平さん。お店を継いだ時、先代からからあげ丼のレシピを教えてもらえず、味の再現に悩んだ時に助けてくれたのも常連客でした。 大平さん: 「お客さんの食べた瞬間の顔を見ながら必死だった。数年経って『今まで通り美味しい』と言われるようになった。息子ですけど、まんぷくファンとしてからあげ丼を作っていく感じで、そこに協力してくれたのがお客さんだったので」

「一緒にお店の味を守ってくれたのはお客さん」。大平さんの思いはしっかりと客にも伝わっています。そして、大平さんの人柄にひかれたファンの一人は、現在お店のスタッフの後藤麻耶華(まやか)さんです。後藤さんは、学生時代からの店の常連でした。 スタッフの後藤さん: 「お客さん一人一人をすごく大切にしていると当時思っていて。結婚、出産、育児が落ち着いた時に何がしたいのだろうと思った時に、『そうだ、まんぷくで働きたい』と思って」

先代が生み出した名物の丼を受け継ぎ、その味を守り続ける伊勢市の大衆食堂。 大平さん: 「来てくれているお客さんをがっかりさせないように、ずっとこのままでいれたら幸せ」 伊勢の街と共に歩み続ける“からあげ丼”の味は、これからも変わらず受け継がれていきます。 2025年8月28日放送