
見かけは戦車なのに最高時速100キロ!機動力抜群“モンスターマシン”の女性指揮官「気性に合っている」

戦車といえば「キュルキュル」と音を立てて進むイメージが強いが、今、陸上自衛隊で配備が進むのは従来の戦車ではない。16式機動戦闘車、通称「MCV(エムシーブイ)」だ。
見かけは戦車なのに足元は、おなじみのベルト式ではなく、付いているのは8輪のタイヤ。機動力と戦車並みの火力を備えた純国産の“モンスターマシン”だ。一体どんな猛者たちが、このモンスターマシンを操っているのか? 岡山県にある日本原演習場で行われた実弾訓練に密着した。
まるでチーター! 最高時速100キロのモンスターマシン

MCVに装備するのは、主砲の52口径105ミリ砲と2つの機関銃。最高速度はあのチーターに匹敵する時速100キロにも達する。一般の車と同じく公道を走ることができるため、武装勢力によるゲリラ戦の脅威にも素早く対応が可能だ。
また重量が従来の戦車より軽いため、航空自衛隊の輸送機で空輸し遠隔地で迅速に展開できるのも強みとされる。
1キロ先のターゲットを狙え!

この日集まったのは、四国・香川に司令部を持つ第15即応機動連隊・機動戦闘車隊。MCVの乗員は4名、それぞれ重要な役割を担う。
・車長(コマンダー):車両全体の指揮を執るリーダー
・操縦手:約26トンもある巨体を、縦横無尽に操る
・砲手:105ミリの主砲を撃つ
・装填手:砲弾を素早く装填する
この4人がチームとなり、MCVのポテンシャルを最大限に引き出していく。そんな猛者ぞろいの精鋭部隊に女性の姿があった。
初のチームで挑む女性指揮官

米澤2等陸尉がリーダーを務めるチームは、米澤さんと装填手の宮國陸士長が女性だ。米澤さんは、自衛官だった祖父の影響で入隊。北海道の戦車部隊に所属していたが、半年前にMCVの部隊に配属されたばかりという。しかも、このチームのリーダーとして実弾訓練に臨むのは初めてだった。

実弾訓練で狙うのは、約1.5メートル四方のターゲット。射撃位置からは、約1キロ離れていた。実弾訓練1日目は、MCVが停止した状態でターゲットを狙う。
米澤:「発射命令、撃て!」
砲手:「発射!」
わずかにターゲットを外した。

その後も狙いを定めるが、周りの土砂が舞うばかり。米澤さんはメンバーと原因を探り合う。どうやら射撃時の反動の計算が不十分で、照準がずれたようだ。修正し再び的を狙う。今度は見事に真ん中を射抜いた。

翌日は難度がはるかに高くなる、MCVを走らせながらの連続射撃だ。走行しながら射撃するには照準を合わせる砲手の技術はもちろん、機敏な車両操縦、砲弾のすばやい装填がカギとなる。米澤チームの連携を、部隊幹部も固唾を飲んで見守っていた。そしてMCVが唸りを上げる。

米澤さん:「操縦手、前へ」
宮國さん:「装填よし」
米澤さん:「発射!」

1キロ先の的が揺れた。見事、2発連続で命中し、互いに健闘を称え合う米澤チーム。試練を乗り越えるたびにチームの絆は強くなるようだ。
米澤さん:「MCVはすごく速くて、しかも最新の装備を積んでいます。自分はせっかちなほうなので、気性に合っているかな(笑)」
日本は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しているとされる。そんな防衛の最前線を“女性の力”が支えていた。





