
名刺入れより一回り大きい「小さな箱」で全国に“みそかつ”を 老舗「矢場とん」が“名古屋めし”の新土産

「みそかつ」の老舗、矢場とんが2025年、新たな名古屋土産を開発しました。かさばらず、持ち運び時間も気にならないという“新土産”を取材しました。
名古屋名物・みそかつといえば「矢場とん」

創業78年、みそかつの「矢場とん」。とんかつに甘辛いみそダレをかけた「みそかつ」に、サクサクした衣の「みそ串かつ」、そして、みそですじ肉を煮込んだ「どて煮」が名物です。

2025年4月に販売を始めたという新作のお土産を、名古屋駅の「矢場とん」のショップで探すと、並んでいたのは「おうちde矢場とん」と書かれた小さな箱。名刺入れよりひと回りほど大きいサイズです。中には、二次元コードがついたカードが入っています。

コードを読み取ってアクセスできるサイトに、必要な情報を入力すれば、指定した場所に名物3種類のいずれかの冷凍食品が届く仕組みです。矢場とんはこれまでも、冷凍食品を販売していましたが、長距離移動の際の持ち帰り時間や気候の問題を気にする客が多かったといいます。
お土産用の商品「あと配土産」を考案

保冷バッグに保冷剤を入れても、夏場だと持ち運びに耐えられるのは、せいぜい2時間ほど。しかも、かさばるとあって客が敬遠し、売り上げが伸び悩んでいました。そこで時間も量(かさ)も気にならない新しいお土産用の商品、「あと配土産(みやげ)」を開発。2、3人前で送料込みの3800円と、お土産としては少々高めですが、年間目標の1000個に対し、3カ月で約300個が売れ、滑り出しは上々です。

メリットはほかにもあります。
冷凍食品はこれまで、店舗ごとに販売。各店舗で在庫を管理する手間がかかるほか、賞味期限が切れた商品のロスが課題でした。その点、「あと配土産」は、通信販売専門のセンターが客からの受注や在庫の管理、発送を一括して行うため、負担やロスの軽減につながります。
売り上げの底上げにつなげる

日本経済新聞社 山名直花記者:
「矢場とんは2023年に、中部電力出身の奥村与幸さんが、創業家以外では初めて社長に就任しました。策定した中期経営計画で、現在約60億円の売上高を2027年度までに75億円に高める目標を立てています。達成に向けた1つの柱が、通販事業です。『あと配土産』を起爆剤に、県内外で『矢場とん』の認知度を高め、売り上げの底上げにつなげたい考えです」

いま「あと配土産」を販売しているのは、愛知県を中心に11店舗だけ。今後、取扱店舗を増やすとともに、注文できる商品ラインアップの拡充の検討を進めます。
矢場とん 総務部 広報グループ
片山 武士さん:
「『この中に何が入っているんだろう?』というワクワク感が、お土産としての魅力を引き立てると思うので、手土産として名古屋のものを持ってきたよと言ってもらえるような存在になればと考えています」