「ペットと一緒に入院できる」全国初の取り組み 背景に患者の切実な悩み 岐阜・笠松町の松波総合病院

岐阜県笠松町の病院で、ペットと一緒に入院できる、全国初の取り組みが始まりました。導入の背景には、患者にとっての切実な悩みがありました。
岐阜県笠松町にある松波総合病院に8月入院した加藤文子さん(92)。
入院先の病院内でふれあっているのは、飼い犬のトイプードル「にこちゃん」です。
この病院が4月から始めた「全国初」という取り組み。病院の敷地内にある専用の施設に患者自身のペットの犬を預け、医師の許可があれば、入院の間、何度でも会うことができます。
加藤さんは8月に帯状疱疹を発症。松波総合病院を受診したところ、すぐに入院することになりました。
「去年11月に倒れて前回、松波総合病院にお世話になった時には、娘がすぐに(にこちゃんを)連れて帰りました。今回もそうするつもりだったけれど…」(加藤さん)
1人暮らしの加藤さん。前回の入院時は、娘がペットを預かりに来てくれたといいますが、今回は急用で迎えに行くことができず、入院をためらっていたところ、ケアマネージャーにこの取り組みを紹介されたといいます。
「松波総合病院にこういう施設ができたから、預かってもらったらどうかといわれてそれなら預かってもらおうとお願いした」(加藤さん)
早期の治療とストレス軽減も期待できる

この取り組みが始まった背景にあるのは、ペットを飼う患者の入院に対する「抵抗感」です。
特に一人暮らしの高齢者は、急な体調悪化のときなどに、ペットの預け先に困り、入院を躊躇するケースが増えていると病院の理事長は指摘します。
「独居の方が、自分のペットの世話をできるのが自分しかいなくて、預けるところがない。そういうことがペットと一緒に入院していただければ解決できる。早期に治療を始めた方が医療費も安くなるし、結果も良くなることが期待できる」(松波総合病院 松波英寿 理事長)
動物とのふれあいで、ストレスや痛みの軽減も期待できるということです。
「安心感はあります。一人住まいでペット飼っている人も多いからいいと思います」(加藤さん)
数日後、無事に退院した加藤さん。この病院では、加藤さんのような短期の入院患者が対象ですが、連携している海津市医師会病院では、長期で入院療養する患者を対象に、犬と一緒に入院できる病棟を4月に開設しています。
「需要はたくさんあると思うが、知られていなくて泣き寝入りしている方も多くいると思う。患者にとっての治癒が短くなることも、心理的安定も大事。全国どこからでも患者を受け入れる能力はあると思っているので、多くのところから受け入れたい」(松波理事長)