
BMXフリースタイル・パーク 中学生クラス国内年間チャンピオン・林匠吾選手 プロも参加するエリートクラスへ 母子で挑むレベルアップ! 挑戦を一心に支えてきた母の思い 愛知・あま市

愛知県あま市の林匠吾(はやし・しょうご)選手(14)は2024年、自転車競技「BMX(バイシクルモトクロス)フリースタイル・パーク」の男子13歳~15歳クラスで国内の年間チャンピオンに輝きました。
BMXフリースタイル・パークは、2021年に開催された東京オリンピックから正式種目に採用された競技です。
今回、さらに上のエリートクラスに挑む林選手と、息子の挑戦を見守る母の姿に密着しました。
チョコレート大好き母子のBMX競技に賭ける思い

普段の様子を取材すると、林選手と母の麻由さんがいたのはデパートのチョコレート売り場です。
「いただきます!おいしい」と、さっそく購入したチョコレートを口にする林選手。
現在、中学3年生の林選手はチョコが大好きだといいます。
母・麻由さん:
「自転車部屋があるんですけど、通称『チョコレート部屋』になってるよね?」
本来、自転車だけを置いているはずの部屋は、すっかりチョコレート部屋になっているといいます。
ご自宅にお邪魔して、そのお部屋を見せてもらいました。

林匠吾選手:
「チョコがいっぱい置いてあります。50種類以上ある。チョコだらけ。全部母親の影響です。最初は何も知らなかった……」
母・麻由さん:
「これはフランスのチョコレート。私の食べるチョコレート。私もチョコ大好き、相当」
自転車用の部屋がチョコレートの部屋になってしまうほど、親子そろってチョコが大好きでチョコレート部屋は親子で共用してるのだとか。
チョコレートと同様、林選手が自転車競技を始めたきっかけも母の影響が強くありました。

林匠吾選手:
「スポーツがずっとやりたくて。お母さんに『スポーツやりたいけど、どんなのがいいかなあ?』と聞いたら、『近くに自転車の競技やってるとこがあるけど、どう?』と勧められて。スクールに体験に行ったら、そこからハマったという感じです」

8歳で始めたBMX。母の麻由さんの意見がきっかけだったものの、林選手は次第に自分から競技に取り組むようになり、BMXにのめり込むようになりました。

母・麻由さん:
「サッカーやりたいと言ってたけど、サッカーっていうタイプではないと思ったから。『自転車競技をやってみたら?』と言ったら、もうどハマりしちゃって。それからは、ずっとやりたい、やりたい、とうるさかったんですよ」

自転車競技「BMX」にはさまざまな形態があります。
林選手が出場する競技は、BMXの「フリースタイル・パーク」。
競技用自転車を自在に操作しながら、複数のジャンプ台を組み合わせて造られた「パーク」の中で、豪快なエアトリック(空中技)を連続的に繰り出す種目です。
トリックの難易度、完成度の高さなどで採点されます。
転倒や着地ミスは大きく減点され、難易度の高い技をいかに正確に数多く決められるかがポイントを左右し、勝敗の分かれ目となります。
2021年に開催された東京オリンピックから、正式種目に採用されました。
林選手は24年に男子13歳~15歳クラスで日本一に輝いた期待の新星です。

母の麻由さんは、必ず林選手の練習に付き添って、練習した技を確認するための動画を撮影します。全力でのサポートを休むことはありません。麻由さんは、競技に打ち込む林選手への協力を惜しまず、二人三脚で頑張ってきました。

しかし、BMXは過酷な競技。
一昨年の練習中には転倒し、鎖骨を骨折する大けがをしました。
常に危険と隣り合わせです。

母・麻由さん:
「意識がなくなったこともあるから、正直、毎日やめてほしいと思っています。もう乗らなくてもいいよと思っちゃうけど、真剣に取り組んでいるから、こっちも一緒にやってあげなきゃなと思っています」
林選手は、今まで中学生のクラスで戦ってきましたが、今回初めてプロも集まる15歳以上のエリートクラスに挑戦!!
大会直前の練習では……。

取り組んでいたのは、自転車を横に1回転させる間にハンドルを4回転させるというオリンピックレベルの超大技! 林選手は、衝撃を受け止めるクッションの山に自転車ごと何度も落下していました。
林匠吾選手:
「片手がハンドルから離れている時間が長いから。バランスがくずれやすい。4回転回すのは難しい」
母・麻由さん:
「う~ん、全然ダメですよ。タイミングが合ってなさすぎて」
動画で撮った試技を見せようとスマホを差し出す麻由さん。
母・麻由さん:
「ハンドルを回すタイミングと回す速度が遅すぎる……」

母のダメ出しに、神妙な面持ちの林選手。「疲れた……」と言い残し、その場を去りました。
母・麻由さん:
「彼の中でもプレッシャーがあるんだと思う。絶対、予選を通過するという思いがあるから。親としては、練習してきたことを悔いなくできてくれればそれでいいと思っています。けがをせずに」
母と共に挑んだ、エリートクラスのデビュー戦

先日、広島市で行われた国内大会。
林選手は初めて、プロも集まる15歳以上のエリートクラスに挑戦しました。
林匠吾選手:
「予選突破して決勝にいきたいな」
母の麻由さんが心配して「緊張してる?」と声を掛けますが、林選手は「あんまり、緊張はしてない」と胸を張ります。

「愛知県、林匠吾!」と順番を知らせるアナウンスが会場に響き渡りました。
いよいよ林選手の出番です。
母の前では「緊張してない」と言っていたものの、スタート台の林選手の表情には固さが見られます。

観客と共に母の麻由さんも見守る中、いよいよ予選が始まりました。
会場の実況:
「720(2回転)」
後方に1回転しながらハンドルを2回転する難易度の高い「バックフリップダブルバースピン」を見事に着地させ、難易度の高い技に無事成功。
麻由さんの「頑張れ!」という声援も響き渡ります。

ここまでは完璧な走行!
残り10秒。
このまま競技を終了することができれば、上位をうかがえます。
競技終了まであと少し…。

ところが、ここで自転車が林選手の前方へ転がっていきました。
まさかの転倒です。
林選手は最後の最後で痛恨のミス。2本あるランのうち、1本目を終えます。

麻由さんからは悲鳴が上がり、顔を手で覆ってしまいました。
後がない林選手。2本目に挑みます。

ところが、緊張の糸が切れてしまったのか、林選手はまたも転倒。
その後は転倒せずに力走したものの、手痛いミスを挽回するには至りませんでした。

麻由さんは、それまで立っていた場所を離れて落ち着きなく歩き回り、動揺を隠せません。

競技が終わり、2本ともミスを出した林選手は予選敗退という結果に。
ほろ苦いデビュー戦となりました。

林匠吾選手:
「悔しいですね。次の大会こそは決勝に行って表彰台に上がりたいなって思います」

母・麻由さん:
「『悔しいね』って声を掛けたけど、いっしょにやってきて今までの厳しい練習を見てるから、本人が一番悔しいと思う。また次の大会に向けて、いっしょに頑張るしかない。あの子がやりたいと言う限り、応援し続けます」