【三重県知事選】津波警報発表から1か月 住民が自主避難所開設のワケ 三重県沿岸部で見えた課題とは 各候補者の主張は

今年7月、ロシアのカムチャツカ半島付近で発生した地震の影響で、太平洋沿岸の広い範囲に発表された津波警報。三重県内では、鳥羽市や尾鷲市で最大0.4メートルの津波を観測しました。
津波警報から1か月。実際に避難した住民たちが感じたこととは。

8月下旬、取材班が向かったのは、鳥羽市相差町。
町内会長 世古務さん:
「まずは(避難が)いつまで続くんだろうなということ。遠いところの地震の発生が、この辺にまで及ぶのか」
町内会長の世古務さん。実は、当時、自主的に“ある対応”をとっていました。

これは、警報が発表された当日、同じ場所で撮影した映像。よく見ると、柱には「避難場所」の文字が。
世古さん:
「従来の災害用の避難所にはなっているけど、津波の(指定)避難所にはなってない。町民の皆さんの安心安全、スピード感を持った時には、(指定された保育所よりは)ここの方が有効だろうなと」
世古さんは、了解を得た上で、市が開設した避難所とは別に高台の神社を一時的な避難所としたのです。

なぜ、自主的にここに誘導したのか。市の指定避難所に一緒に向かってみると、最も近いルートの道中で、海が見えてきました。
記者:「今通ってきた道はすごく海に近いですね」
世古さん:「近いですよね」
世古さんたちが暮らす相差町はこのエリア。
市が保育所に開設した最寄りの避難所は、車で10分ほどかかる上、海に近い道路を通らざるを得ないといいます。
鳥羽市は、津波の到達まで避難できる時間があったことなどから、今回は、隣町に指定避難所を設けたということです。
世古さん:
「相差町の住民感情からいくと、隣地の国崎町までは移動しにくい」

今回の津波からの避難について専門家は。
愛知工業大学 川崎浩司 教授:
「(今回の)津波は遠地津波と呼ばれていて、到達には時間が少しあった。慌てずにしっかり避難できる時間は確保できたと思う。一方で地域住民の方々に、行政はなぜ避難場所を設けたのか。ちょっと離れたところに(避難所を)設けた理由をしっかり伝える必要はある」

一方で、神社の一時避難所にもある課題が。
防災倉庫を見せてもらうと、中には、水や簡易トイレなどが備蓄されていましたが、備蓄していた食料が賞味期限切れ。新しいものと入れ替える前に今回の津波があったのです。
津波警報が出たことで、住民も危機感を強めていました。
地元住民:
「津波だけだったらいいけど、地震が先に来てしまったら、建物の崩壊で走って逃げられる状況じゃないと正直思います」
「相差町は高いところが少ないものですから、できれば防災タワーのようなものを造っていただけたら」
今回のように津波が数十センチでも、被害が大きくなるおそれもあるといいます。
愛知工業大学 川崎 教授:
「結果的には津波の高さが、それほど大きくなかったが、特に三重県の南部はリアス海岸という地形なので、非常に流れが強くなる。しっかり避難するのが非常に重要だと思います」

3人が立候補している三重県知事選挙でも各候補が防災対策を訴えています。
一見勝之 氏「南海トラフ対策に特化した条例制定」
県内の市町どうしの支援を規定するなど、南海トラフ地震発生時の対応をまとめた条例の制定を目指す。
伊藤昌志 氏「地形や人口に即した避難計画の見直し」
東日本大震災など被災地支援の経験などからどこにいても支援や物資が届く体制作りを訴え。
石川剛 氏「木造建築物の耐震補強工事の促進」
建設会社社長として災害復興工事を行った経験などから木造建築の耐震化などを訴え。
三重県知事選の投開票は、9月7日です。