繁華街の裏路地にある昔懐かしい屋台ラーメンを訪れる様々な人間模様『チャント!特集』
名古屋市の繁華街に、昔ながらの屋台ラーメンがあることをご存知でしょうか?御年74歳の店主は、日々常連客の胃袋だけでなく訪れる人の心も満たしていました。屋台ラーメン「ヤムヤム」での様々な人間模様を取材しました。
昔変わらぬ味のラーメン
稲垣一三(いながき・かずみ)さん74歳は、香港で知り合いのツテを辿って有名レストランで長年修業を積んだ後、名古屋市大須(おおす)エリアで開業。店内に笑いがこだまする人気店でした。
しかし開業して約30年、建物の老朽化に伴う店じまい。生活のために屋台ラーメンを開業しました。メニューは醤油ラーメンとチャーシュー麺のふたつだけです。
昔ながらの醤油ラーメンの具材は、チャーシュー、メンマにナルトにネギ。そして、稲垣さん一番の自慢は、チャーシューです。およそ30年変わらぬ味は、脂身の少ない肩ロースを半日煮込んだもので、見た目よりもさっぱりとした味わいをしています。お酒のアテにもぴったり。
稲垣さん「スープは鶏ガラしかほとんど使わない。特に子どもは『こういうラーメンは食べたことがない』って言いますね」
最近は豚骨味などのラーメンが多く、新鮮なようです。「食べ物屋さんは、自分が美味しいと思わないとお客さんに出せない」と、味にはこだわりを持っています。
常連客のこどもの父親代わりに
昔は深夜まで営業していましたが、今はコロナ禍もあって夜8時には店じまい。しかし、お昼の営業を始めたら新しい出会いも増えたそうです。屋台ラーメンを珍しがる初来店のお客さんに交じり、常連客も。
常連客の1人、飲食店で働く女性客。稲垣さんの顔を見たいと週に一度はやってきます。彼女の母も、そして自身もまた、シングルマザーです。仕事で夜不在のときには、稲垣さんが女性客のお子さんにご飯を食べさせてくれたり、うちにおいでと言ったりするそうです。
稲垣さん「(女性客の)お母さんがね、昔ウチでバイトしていたんで」
稲垣さんと女性客の母親は、単なる店主と従業員の仲。それでも、父親のいないこどもたちに寂しい思いはさせられないと、彼女たちの世話役を買って出たそうです。
外国人留学生の寂しさも癒す味
懐かしい香り漂う屋台ラーメンを訪れるのは、日本人だけではありません。
稲垣さん「ベトナム人、中国人、ネパール人。フィリピンの子は少なくなったね」
安くて美味しい「ヤムヤム」は外国人留学生にも大人気。ベトナム人留学生も、常連の1人です。
コロナの影響で、母国の家族とは離れ離れ。
留学生「家族とは3年くらい会ってません。会いたいですね。寂しい」
異国での暮らしは寂しいですが、「ヤムヤム」に来ればラーメンの温かい湯気と、屋台のほんのり灯る明かりが寂しい時間を忘れさせてくれます。留学生にとって、稲垣さんは数少ないお友達です。
大須の路地裏、昔懐かしい屋台ラーメン。一杯食べて、心と胃袋を満たされたいお客さんが今日もまた、訪れます。
CBCテレビ「チャント!」3月7日の放送より。