全国に数人の病...「毎月、病院に搬送」「治療費は月15万円」“全身性肥満細胞症”を患う女性に密着『チャント!特集』
世間にはあまり知られていない病気が存在します。発症のメカニズムが不明なだけでなく、治療法が確立されていない上、高額な治療費や薬代に苦しんでいる人もいるのです。国内に数人しかいないという稀な病気「全身性肥満細胞症」を発症した外村潮美さん(20歳)。病気と向き合いながら、自身の夢に向かって前向きに生きる姿を取材しました。
月に一度は緊急搬送されることも
潮美さんは、高校2年生の頃に突然腕や足・顔まで全身の皮膚に紅斑(こうはん)が現れる全身性肥満細胞症と診断されました。骨髄内の「肥満細胞」が異常に増え、重いアレルギー症状・アナフィラキシーを引き起こす病気で、顔が腫れたり血圧が低下して意識が遠のいたりします。病名に肥満とありますが、体形とは無関係。日本国内に数人いるかどうかと言われる極めて珍しい疾患で、根本的な治療法はありません。
潮美さん「救急車で3日連続運ばれた時もある。最近は(緊急搬送は)月1回のペースですね。」
いつもよりちょっと動きすぎただけでアナフィラキシーが出ることもあれば、疲れによって後から症状が出るパターンもあり、無理ができません。
馬が大好きだという潮美さんは、病気が発症するまで高校で馬術部に打ち込んでいましたが、発症後は部活動のみならず馬に近づくことすらできなくなりました。
処置が遅れると命を脅かす
アナフィラキシーで吐き気があるため、家ではいつでも吐けるよう手が届く場所にかごを置いています。また症状は前触れなく突然現れ、夜中や朝方に症状が出ることが多いため、潮美さんの枕元にはすぐに母親を呼ぶことができる非常ベルも設置されていました。
母親「処置が遅れると命を脅かす状態になります。『今回はもうダメかもしれない』と何回か思いました。無理をさせないようにずっと見張ってなきゃいけないですし、ずっと頭の中は潮美のことでいっぱいです。」
潮美さんは月に一度、名古屋大学医学部附属病院の小児科に通っています。「全身性肥満細胞症」には、根本的な治療法がありませんが、2020年に骨髄移植を受けてから骨髄内の肥満細胞は大幅に減少し、症状は軽くなりました。しかし重いアレルギー症状は今も続いています。担当医師によると、全国の医師に声をかけて調べても7名しか確認できない、稀な疾患のため十分な治療データが得られないとのこと。
署名活動も難病指定には高いハードルが
潮美さんは白血病の治療に使われる抗がん剤など6種類の薬を欠かさず飲んでします。20歳になるまでは「小児慢性特定疾病」の制度で薬代や入院費をほぼ全額助成を受けることができましたが、20歳になって対象から外れた為、薬代が月に15万円もかかり、家計を圧迫しています。
そこで、潮美さんは「全身性肥満細胞症を指定難病に登録してほしい」という想いから署名運動を始めました。指定難病に登録されれば、医療費助成だけでなく、治療薬の選択肢が増えることなどが期待され、これまでに4万人ほどの賛同を得ました。
しかし国の難病指定には高いハードルが。現在小児慢性特定疾病の指定を受けているのは788疾患に対し、指定難病はおよそ半分の338疾患。認定要件には「治療法が確立していない」「希少な疾病である」など、国の厳しい審査が必要です。昨年申請された48疾患のうち、追加登録は6つだけでした。
患者を支援する団体である日本難病・疾病団体協議会は「税金を使うという意味で、指定難病検討委員会で指定要件を満たすかしっかり検討されていると聞く。苦労している患者さんがいる限りは、(すべてを)指定難病に登録してほしい」(辻 邦夫常務理事)と話します。
病気と闘いながらも前向きに行動
無理をしないよう、自宅で静かに過ごす毎日。幼馴染との久々の散歩も許可されたのは30分だけ。出かける時にはアナフィラキシーが出たときにうつエピペン(自己注射薬)や、声がだせず助けを求めることができない時の為に非常用ベルなどを、必ず持ち歩いています。
そんな潮美さんにはある「夢」がありました。自分がこども病棟でお世話になったので、大学に入り医療の資格を取って、小児科で働く医療従事者になりたいという夢です。また大学では、志半ばで諦めた馬術にも再挑戦したいという目標もあります。病気と闘いながらも、力強く前を向いて歩んでいます。
CBCテレビ「チャント!」4月5日の放送より。