
【倍率10倍超の県立中高一貫校に初潜入】どんな授業してる? 従来の公立中学との違いは? 生徒が主役の“独自カリキュラム”実態を調査 人気高まり来年は倍率20倍の学校も…!?

2025年春、倍率10倍以上の難関を突破した子どもたちとともに、スタートをきった4つの愛知県立の中高一貫校。あれから半年以上、“探究心”を育てるとうたった学校生活の実態を探るべく、地上波のカメラが教室の中へ初潜入しました。
1年生だけの学校生活「学校を一からつくっていく難しさも…」

壁が取り払われた開放的な教室で、熱心に話し合う生徒たちの姿がありました。授業を受けていたのは、80人の1年生たちです。
ここは、愛知県にある刈谷高校付属中学校。2025年度から4校開校した愛知県立の中高一貫校のうちの1校で、高校の敷地の横に、4階建ての校舎が作られました。
1年生は倍率10倍超えの入試をくぐり抜けた子どもたち。学校生活はどんな様子なのか、生徒に尋ねてみると…
生徒:
「先輩がいない分、学校を一からつくっていく難しさもあるんですけど、楽しんでやっています」
先輩がいない以外にも、ほかの学校とは違うところがありました。中学の部活は実施されておらず、高校の部活に週2回参加しています。
さらに、開校したばかりだからこそ困ることもあるようです。
生徒:
「他の学校ならもともと学校の備品としてあって使えるものも、なかったりすることが多くて、文化祭の経費から引かないといけないみたいなものも多かった。この学校にものが少ないなっていうのはありますね」
独自カリキュラム「探究」を重視した総合的授業とは?

公立高校の選択肢を増やそうと始まった県立の中高一貫校。独自のカリキュラムが組まれ、通常の公立中学とは授業時間も異なります。
刈谷高校付属中学校 木村紘一朗副校長:
「(普通の中学より)週2時間多く時間割を組んでおりまして、本校の特色として、総合的な学習の時間と、1年生は理科が増える」
中高一貫の特色が詰まっているという「総合」の授業を、特別に見せてもらいました。

この日、生徒たちが取り組んでいたのは、それぞれ自分たちの気になることを「探究」する授業。数人のグループに分かれ、「シソを全国に広めるためには何をすればいいか」や、「お祭りを絶やさないためにはどうすればいいのか」などについて話し合っていました。
刈谷高校付属中学校 木村紘一朗副校長:
「どういう力が備わっていれば社会に変化を起こすことができる生徒になるか考えたときに、何事も主体的に自分から進んで行動すること、仲間と対応しながら課題解決を進めていくことを大事にしたいなと」
生徒が中心となり、先生はあくまで寄り添う形でサポート。
1年生の前半に取り組んだのは「地域」について。お祭り、特産品、給食など、それぞれ好きなテーマを探究してきました。

こちらのグループは、地域のマスコットキャラクターについて探究したいと集まった生徒たち。中には知立市の「ちりゅっぴ」が大好きだという男子生徒も。
しかし、ただ好きだというだけでは授業になりません。学校が重視しているのは、自分たちで問いを見つけること。
「ちりゅっぴ」好きの生徒は、仲間の協力を得て、マスコットキャラクターに込められた思いを探り、発表することにしました。
市役所に自分で直接質問すると、返ってきた答えは「地域活性化」など。キャラクターによる収益が何に使われているかなどは、今回の調査ではわかりませんでしたが、集まった情報を発表用のポスターにまとめました。

いよいよ発表の日。体育館に貼り出されたポスターの前には、何人かの生徒が集まってくれました。
緊張しつつもマスコットキャラクター3つについて調べて発表すると、聞いていた生徒たちの反応も上々。無事に10分ほどの発表が終わりました。
「ちりゅっぴ」が好きだという生徒:
「ちりゅっぴが何をベースに作られてるとかを知ってる人はあまり多くなかったので、ちゃんときょうは話したので、よかったかなと思ってます」
込められた思いをしっかり調査したからこそ、キャラクターの魅力を伝えることができました。
高まる人気と期待 2026年度に向けた課題は…?

今回取材した刈谷高校付属中学校は「総合」の授業を大きな特色としています。取材では保護者からの評判も良いということでした。
しかし、授業を統括する先生たちは来年度以降の課題が見えてきたようです。
この「総合」の授業は週1回2時間行われていて、先生たちは毎日約3時間を準備に費やしています。
新1年生の入学により、進級した2年生と合わせて「総合」の授業数が倍増。他の授業も倍になるため、準備時間の確保が難しくなるというのです。
「総合」の授業は、新たに入学する生徒も期待している目玉科目。準備時間は減らしたくないということで、学校側は会議の削減など業務改革で時間を捻出したいとしています。
準備時間の確保という課題について、人気予備校講師であり3人の父親でもある村瀬哲史さんは…
村瀬哲史さん:
「学びの準備をするというのは、教職の核となる部分。ここを減らさなければいけない環境を作ってしまうと、一番迷惑を被るのは子どもたちなんです。自治体としてこういう取り組みを進めていくのであれば、予算や人員の配慮も必要なのかなと思います」
県立の中高一貫校は人気が高く、今年度の受験では明和高校付属中学校などが倍率17倍となりました。
佐鳴予備校千種校本部によると、「1年目は保護者が様子見をするため、2年目のほうが倍率が上がる傾向がある。人気が高い学校は20倍ほどになる可能性も」という見方を示しています。
人気が高まる県立中高一貫校。2026年度も時習館高校付属中学校など、新たに5校が開校します。独自のカリキュラムによって、今後どのような成果が出るのか注目です。





