“お餅愛”から生まれた「おもちかすてら」 伊勢市出身の元銀行員が開発 米価高騰に負けず農家を応援

愛知県に住む元銀行員の男性が生み出した「おもちかすてら」。
もちもちの新食感が特徴のカステラに使われているのは、小麦粉ではなく、もち粉と米粉。そのこだわりの理由を取材しました。
愛知県江南市にあるカフェ「抹茶文庫」の人気メニューは「カステラ」です。
「カステラ」と言っても、普通のカステラとは違った、この店ならではの特徴があるんです。
「見た目はカステラです。食べればお餅です」(ISOコーポレーション 礒喜久社長)
この“食べればお餅”というカステラ、その名も「おもちかすてら」。
秘密は原材料にあります。
「おもちかすてら」は小麦粉を一切使わず、使っているのはもち粉と米粉。
もち粉と米粉を選んだのには、ある理由が…。
「誰でも食べられるスイーツを」

「小さいお子さんがケーキを食べたいけれど、食べられるケーキがない。こういう姿を洋菓子店の前で見て、なんとか少しでも力になれるといいなと」(礒社長)
「誰でも食べられるスイーツを作りたい」という思いから生まれた「おもちかすてら」。
洋菓子で使われることが多い乳製品や蜂蜜も使わず、みりんを使うことでコクと優しい甘さを出し、小さな子どもも食べられるようにしました。
「甘すぎず、ちょうどいい甘さ。食感がすごくもちっとしている感じで、フォークで切れない」(来店した人)
「いつも食べているカステラとは弾力が全然違って、すごくもちもちでおいしかった」(来店した人)
“お餅愛”から始まった挑戦

この店を立ち上げたのは、今年76歳を迎えた礒喜久社長。かつては銀行員として働いていましたが、65歳で退職し、ある旅に出たことが新たな人生の始まりになったといいます。
「おいしい餅を食べたいという思いで全国を回って、やっぱり伊勢が一番おいしいと感じて、伊勢の餅を凌駕するお餅製品を作りたい、それを食べていただきたい、それが私の人生の集大成。お餅愛です」(礒社長)
礒社長は三重県伊勢市出身。ふるさとで食べた餅のおいしさを多くの人に伝えたいという思いもあり、67歳で起業。餅を提供するカフェを始めました。
「2020年ごろは、米余りで困っていた。農家の所得を維持するためには別の消費、今まで和菓子で使うことが中心だったけれど、洋菓子で米が消費できればもっともっと生産量を伸ばすことができる」(礒社長)
日本の農家を応援したいと、米を消費するための新たな商品としてカステラ作りに挑戦。
ここで目をつけたのが、愛知県産のもち米「やわ恋もち」です。
作っているのは設楽町のコメ農家。年間約7トンの「やわ恋もち」を収穫しています。
「やわ恋もち」は、2018年に愛知県と農研機構が共同で開発した新品種のもち米で、柔らかさが従来のもち米よりも長持ちすることが特徴です。
しかし、商品開発には試行錯誤を繰り返し、約5年かかったといいます。
「1番は(カステラの)高さが出ないというのと、カステラのようにふわふわじゃなくて、べとついた。このべとつきを取るのは非常に時間がかかりました」(礒社長)
米価高騰に負けず、世界にアピール

この取り組みにコメ農家は…。
「カステラになるんだという驚きですよね。普通だとお餅かおまんじゅうなどになるのかなと思ったんですけど、全然洋菓子になるとは思っていなかった」(「やわ恋もち」を作るコメ農家 金田治久さん)
今後「やわ恋もち」が様々な商品に使われることを期待しているといいますが、今年は米の価格高騰による影響も出てきています。
「価格も1.5倍ぐらいになっていますので、ちょっと高いですね。もち米に関しても今年は高い。来年はどうなるんだろう」(金田さん)
しかし、こうした価格高騰の影響を受けながらも、礒社長の挑戦は続きます。
10月、愛知県で行われたフードビジネスの商談会にも出店し、「おもちかすてら」をPR。
さらに、国内にとどまらず、シンガポールで開かれたイベントでも「おもちかすてら」を展示販売し、約400個が売れたといいます。
「日本だけじゃなくて、海外も巻き込むような形でお餅を出していきたい。そこが最終的な狙いです」(礒社長)
「多くの人に喜んでいただけるように、今まで私が皆さんからいろいろな助けをいただきましたから、それをできる限り多く還元していきたい」(礒社長)





