愛知・西尾市特産「三河一色うなぎ」がもっと高くなる? ウナギの国際取引が“許可制”となる動き

おいしそうに焼きあげられる「うなぎ」。国際社会で「取引規制」の議論の的となっています。将来、さらに手に入りづらくなるかもしれません。
愛知県西尾市役所の前に11日朝、長い行列が…。
その人たちの視線の先には、網の上でじっくり焼かれる「三河一色うなぎ」。
普段は2000~2500円で販売されるという1尾まるごとの”長焼き”が、11日だけ1400円で限定販売されました。
なぜ、市役所で“お値打ち”なうなぎを販売しているのでしょうか?
「『一色産うなぎ』といっても首都圏などでは知名度が低いところがまだある。生産者が頑張って焼いている熱意も届けながら、一色産うなぎをPRしたい」(西尾市役所 農水振興課 小笠原敬 課長)
西尾市は、特産品でもある「三河一色うなぎ」の知名度拡大のため、特許庁による”ブランド認定日”でもある「11月22日」を今年から記念日として登録。
ブランド力強化を目指し、うなぎがお得に食べられるキャンペーンを11日から22日まで行っています。11日は、販売時間前に列が打ち切られる人気でした。
キャンペーン期間中は、西尾市内や周辺の飲食店のほか、東海地方に店舗があるスーパーの一部でも、三河一色産のうなぎをお得に提供するといいます。
多くの人をとりこにする”うなぎ”。
ただ今、”うなぎ離れ”につながりかねない「危機感」が漂っているといいます。
「今までの価格では売れないんじゃないかと思う。西尾市にとっては死活問題ですね」(小笠原課長)
日本は規制強化「反対」の立場

「うなぎ」の輸出入をめぐる国際的な動きが、いま活発になっています。
「わが国としてはウナギ属全種の『付属書2』への掲載には反対」(当時の小泉進次郎 農水大臣)
当時の小泉農水大臣が「反対」と口にしたのは、うなぎの国際取引の「規制」に関する議論です。
絶滅の危険性がある野生動物の国際取引を規制する「ワシントン条約」。
国内でも多く消費されている「ニホンウナギ」などを含む、すべてのウナギを「取引規制」の対象に加える案がEUなどから浮上し、10月、事務局は「採択を勧告する」と発表しました。
「11月の締約国会議に向け、引き続き我が国の立場への理解が加盟国に広がるように、関係国と連携しながら全力を尽くしていく所存です」(当時の小泉農水大臣)
専門家「国際的な資源管理が進んでいない」

ウナギの生態などの研究を行う中央大学法学部の海部健三教授は、議論の背景にウナギの国際的な資源管理が進んでいないことを指摘します。
「ニホンウナギは保全すべき状態にあると思っています。そのためには消費量を減らさなければいけないし、生息環境を回復していく必要があると思います。東アジアでは、ニホンウナギを含むウナギの資源管理、そしてヨーロッパウナギ・アメリカウナギの輸入管理もあまり進んでいない。そういう状況が続いたことによって、このような提案がされたとみている」(海部教授)
規制強化「反対」の立場の日本。今後どんな対応をとるべきなのでしょうか。
「最も重要なことは、科学的な情報に基づいて政策決定をしていくことだと思う。農林水産省または日本政府は掲載に反対するために『ウナギは増えている』『絶滅危惧種に相当しない』という非常に偏った科学的知見のみをとりあげて自分たちの主張を貫こうとしている。不利な情報もフラットに見て、科学的に情報を集め、それに基づいて政策決定をしていくことが今求められている」(海部教授)
24日からウズベキスタンで開かれる会議で、もしこの案が採択されれば、将来、すべての種類のウナギの国際取引は「許可制」となる見込みです。
水産庁によりますと、去年のウナギの供給量約6万1000トンのうち、輸入が占めているのは約7割。
国際取引のハードルが上がることで、ウナギの日本への輸入量が減れば、価格の上昇も懸念されます。
「三河一色うなぎ」へのしわ寄せは、覚悟しなければなりません。
「いまでも値段が高いので、年に数回の楽しみにしている人もいる。それがさらに値段が上がるとなると、1回も食べられないとなってしまう心配はある。西尾市の伝統的な産業である一色うなぎの養殖を全国の皆さんにおいしく味わってほしい願いは変わらないので、引き続き頑張っていく」(西尾市役所 小笠原課長)





