
儲かっているかと思いきや…圧倒的人気の北海道物産展「そのものは利益が出ない」百貨店の裏事情と年2回開く狙い


名古屋・松坂屋で開催中の「秋の大北海道物産展」では、行列必至のラーメンや道外初登場のスイーツなど “北海道の美味”が集結。実は「北海道物産展」は利益度外視のイベントながら、店全体の売り上げを押し上げる百貨店の大黒柱となっています。人気催事の魅力を探りました。
■北海道を知り尽くすバイヤーのこだわり
松坂屋名古屋店で、10月13日まで「秋の大北海道物産展」が開催されています。この人気催事を支えているのが、専属バイヤーの本田大助さんです。

本田さん: 「自分が食べて“ぜひ食べて欲しい”と思うものを、熱心に出店交渉しています」 北海道に移り住んで22年。1年のうち半分は食べ歩きをしているという本田さんが、特にこだわるのは、「名古屋初出店」、「会場限定」、「超お値打ち」の3つです。

まずおすすめは、名古屋初出店のラーメンの名店「釧路まるひら札幌店」の「塩と醤油のミックスラーメン」(1000円)。 カツオの一番出汁のみを使い、あっさりしながらも凝縮した旨味がくせになるスープと、よく絡むオリジナルのちぢれ麺が特徴のシンプルながらも究極の一杯です。 客: 「これが目当て。(広告に)載っていたので、絶対食べたいと。出汁が効いていておいしい」

続いては、北海道以外では初登場となるスイーツ。 本田さん: 「札幌の『白い恋人パーク』でしか食べられないスイーツを、道外初で持ってきました」 北海道を代表するメーカー・白い恋人をドリンクで再現した「飲む白い恋人」(600円)。同じホワイトチョコを使ったソフトクリームをシェイク状にし、砕いたクッキーをトッピングしています。

客: 「おいしかったので、もう1度来ました。ソフトクリームとドリンクの“いいとこ取り”」 さらに注目は、小樽洋菓子舗ルタオが松坂屋のために特別に作った「雪いちご」(2808円 1日24個限定)。北海道産のチーズとイチゴを合わせ、もちもちの求肥で包んだ贅沢な逸品です。

そしてお値打ち品として人気なのが、馴染みの水産会社に分けてもらった、傷が付いた魚や、加工した後に余った材料をパックにした商品。

本田さん: 「シャケの塩こうじ漬け(6切れ)」は1000円、「シャケの切り落とし(500g)」は750円と、嬉しい価格で販売されています。
■採算度外視でも続ける理由は“相乗効果”
毎回大盛況の北海道物産展ですが、実は利益はあまり出ていないといいます。 本田さん: 「経費がかなりかかるので、物産展そのものは利益が出ない」 膨大にかかる経費。海産物が多いため、他の物産展と比べ大量の冷凍庫や冷蔵庫が必要で、電気代もかさみます。

さらに、北海道から名古屋への輸送コストの負担も他の物産展に比べて大きい。それでも年に2回開催する理由があります。 本田さん: 「とにかく“買い回り”が一番多い。いろんな所で買い物していただけますし、大事なイベント」

物産展をきっかけに来場した客が、デパート内の他の店で買い物を楽しむため、全体で売り上げが伸びるといいます。北海道物産展の期間中は、ブランド品を購入する客も増えるそうです。
■北海道物産展の原点を探る
日本で初めて北海道物産展が開かれたのはいつなのでしょうか。百貨店の歴史に詳しい中部大学の末田智樹教授は、「昭和6年(1931年)12月、上野松坂屋(東京)で開催された『北海道物産宣伝即売会』がその始まりだと思う」と話します。

末田教授: 「一番最初に出てくるのが新巻鮭。燻製、粕漬け、魚卵の加工品」

では名古屋ではどうでしょうか。 末田教授: 「大正5年(1916年)11月に名古屋で「毛皮製品陳列会」という催しが。樺太や北海道産のクマ、キツネ、タヌキ、ウサギの毛皮製品(売った記録がある)。これもある意味北海道物産展です」

名古屋もまた、北海道物産展の歴史を刻んできた街のひとつなのです。 2025年10月3日放送