
高値で取引されるシラスウナギの密漁防ぐ大手自動車部品メーカーの技術 「QRコード」で流通を管理

ウナギの稚魚のシラスウナギ。特にニホンウナギのシラスウナギは高い価格で取引されていることから、密漁や不透明な取引が後を絶たず、2025年12月から取引記録の作成や保存などを義務づける法律の適用対象となります。この対応に大手自動車部品メーカーのシステムが役立つことが期待されています。法律の実効性が高まるといわれるシステムとはどのようなものなのでしょうか。
シラスウナギ流通の透明化を目指す新システム

夜の堤防で行われる「シラスウナギ」の漁。絶滅危惧種に指定されているニホンウナギのシラスウナギは、高い価格で取引されています。しかし、報告されている採捕量と実際の採捕量に不一致があり、密漁の疑いが指摘されています。

水産庁増殖推進部栽培養殖課 生駒さん:
「漁師が他人に採捕量を知られたくないといった理由で報告しないことや、指定された出荷先以外へより高い値段でシラスウナギを販売し、それを報告していないこと。無許可の採捕、いわゆる“密漁”のようなものがあるのではないかと考えています」
流通の透明化を目指す「水産流通適正化法」

シラスウナギは2025年12月から、取引記録の作成・保存を義務づける「水産流通適正化法」の適用対象となります。違反した場合は、50万円以下の罰金が課される場合も。この法律により、密漁を防ぐことが期待されています。
新システムによるトレーサビリティーの確保

現在、シラスウナギには流通過程を見える化する“トレーサビリティー”のシステムがありません。そこで法に適用するため、漁業協同組合ではデンソーが開発したシステムを取り入れるための準備が行われていました。
この新システムは、漁師や仕入れ業者がQRコードを機械にかざして取引記録をクラウドに保存・管理するもの。流通過程を正確に記録することで、密漁品の流通を防ぐことが可能になります。

まず、捕ったシラスウナギをバケツごと仕入れ業者に渡し、業者は小さな網かごにシラスウナギを移します。次にしっかりと水を切って重さを計測。シラスウナギが弱らないよう、すぐに水槽に入れます。そして全体の重量から、かごの重さを引いてシラスウナギの重さを計算し、プリントアウトすれば完了です。

出てきた伝票を見てみると、16桁の漁獲番号の文字が記載されています。左の7桁の数字が漁師や事業者が分かる「届出番号」で、中央の数字が日付です。
12月以降は、この「届出番号」がないシラスウナギは流通させてはいけないことになるため、密漁の防止につながります。
地域と文化を守る取り組み

この新システムは使いやすさだけでなく、導入コストの安さも評価され、愛知県のほかに鹿児島県や宮崎県でも試験運用されました。
デンソーフードバリューチェーン事業推進部 田中栄太郎さん:
「トレーサビリティーについては、海外も同じような課題を抱えていますので、今後は国外にも支援システムを提供していければと考えています」

日本経済新聞社 名古屋支社 長縄礼香記者:
「愛知県はウナギの養殖で生産量が全国2位です。シラスウナギの流通過程を正確に記録・管理することで密漁品の流通を防ぎ、東海地方のウナギ文化も守られていくことになるのではないでしょうか」