「弱視から子どもの視力を守りたい」メガネ卸業者が子どもがワクワクするメガネを発掘・販売
名古屋で約60年続くメガネの卸売り業者が最近、ある特殊なメガネを手がけるようになりました。コンセプトは「子どもの視力を守る」。一体、どんなメガネなのか、取材しました。
名古屋市の金山駅近くのメガネ店に並んだ、カラフルで柔軟性のあるメガネ「トマトグラッシーズ」。子ども用のメガネで、特に弱視の治療に多く使われる製品です。名古屋眼鏡が2010年から取り扱いを始め、今では多くの親子から支持されています。
トマトグラッシーズの特徴と効果
弱視とは、子どものころに何らかの原因で視力の発達が害されて起きる低視力のこと。治療には、視覚の感受性が高い生後1カ月半頃から8歳頃までにしっかりと物を見ることが重要で、早い段階でメガネをかけることが効果的だといわれています。
ところが、メガネを異物と感じてすぐに外してしまう子どもも多いそう。その点、トマトグラッシーズは柔らかい樹脂製。またサイズ調節による付け心地の良さにこだわっています。
「弱視というものがあると発信して、子どもがかけているメガネに対する世の中の認識が優しくなっていければ、と」
そう話すのは、トマトグラッシーズを手がけている名古屋眼鏡の金子和幸さん。名古屋眼鏡は約60年続く、メガネの卸し業者です。同社が子ども用のメガネに着目したのは2009年。当初、子どもが身に着けることを楽しんでくれるようなメガネを自前でつくろうと試みました。
しかし巨額の投資額とリスクを考え、二の足を踏んでいたといいます。
名古屋眼鏡 営業企画室 金子和幸課長:
「金型に溶剤を流し込んで生産していくので、金型をいろんなバリエーションでつくるとなると、投資額として巨額になってしまいます。そこがリスクの面で踏み出せませんでした」
韓国のトマトグラッシーズ社との出会いと交渉
つくれないなら、卸しだけでも携われないか。国内のさまざまなメガネメーカーに問い合わせたり、展示会を巡ったりしていた時に出会ったのは、韓国のトマトグラッシーズ社の動画でした。
名古屋眼鏡 営業企画室 金子さん:
「金(キム)社長の息子さんが弱視でした。息子さんの弱視の治療に適したメガネをつくりたい。その思いでつくったメガネとの話もあって。まさに(弱視への)思いを一緒にできるというか、思いのある企業さんだな、と感じました」
初期の課題と普及の取り組み
さっそく、韓国に赴いて輸入・卸しをさせてもらえないか交渉。弱視に悩む子供を少しでも減らしたいという思いが伝わり、快諾されました。2010年8月に国内での販売を始めましたが、販売店の担当者は取り扱いをためらったと話します。
販売店の担当者:
「チープな感じはありました。眼科医からも金属製のメガネの指定があったりすることもあったので、取り扱いを躊躇している部分はありましたね」
そこで名古屋眼鏡は眼科を回り、トマトグラッシーズをPR。徐々に関係者の間で認知が広がり、それに伴って取り扱ってくれるメガネ店が増えていきました。
弱視の子どもと親からの反響
弱視の子どもの親からは、SNS上で反響が。「初めてのメガネで親も子どもも不安でしたが、かわいいメガネに出会えてよかったです」「息子はメガネを嫌がらずにかけて笑顔が増えました」といった声が多く寄せられました。
「弱視の早期発見が大事です。子ども用メガネで弱視に対する役立ちを実感できる事業に携わることができて、本当に良かったですね」と笑顔で話す金子さん。
子どもの視力発達をサポートする名古屋眼鏡の取り組みは、今後も続けられていくことでしょう。