「そのまま外に出るのは怖い」運転免許の技能教習課程が変更　MT車の免許目指す教習生からは不安も

いよいよ新年度。新生活が始まるのを前に、自動車学校は教習生が殺到し、繁忙期を迎えています。自動車学校では2025年4月からマニュアル車の免許の技能教習の課程が変更されます。そこで、何が変わるのか解説します。

MT車の技能教習、34時限→4時限に短縮

4月からは、「マニュアル（MT車）の免許」を取得する人でも、技能講習は基本的にオートマ（AT）車となります。

これまではマニュアル車の免許を取りたい人はマニュアル車で技能教習を受けていました。ですが、新課程になるとマニュアル車の免許を取りたい人でも基本、オートマ車で技能教習を受けることになるんです。

ただ、マニュアル車にまったく乗らないわけではありません。4時限だけ技能教習の時間はありますが、従来の34時限と比べるとかなり運転する時間が少なくなります。さらに、技能教習でマニュアル車を路上で乗る機会はなくなります。卒業検定も自動車学校内で行われるので、マニュアル車を路上で運転することはなくなるのです。

なぜ、マニュアル免許の技能教習の内容が大幅に変更されたのでしょうか。

将来的にMT車の生産が縮小、停止が想定される

愛知県警運転免許課によりますと「ドライバー不足の問題からトラックやバスのオートマ自動車の普及が進んでいること。また将来的にマニュアル自動車の生産が縮小、停止が想定されるため」を理由としています。

今でも多くの車はオートマ車が主流ですが、大型のトラックやバスでもオートマ車の導入が進めば、オートマ車の免許があれば、ほとんどの車に対応できるのです。

この新課程への移行を受けて、自動車学校はオートマチック車の導入を急いでいました。

教習生の約8割が「オートマ限定」を希望

名古屋市北区にある「城北自動車学校」は、毎年、新年度を迎える直前は、運転免許の取得を目指す高校3年生を中心に教習生が急増します。城北自動車学校では現在、免許の取得を目指している教習生の約8割が「オートマ限定」免許の取得を希望しています。

教習生の多くは「坂道発進」に苦戦

オートマ車を希望する人が多い一方で、マニュアル車の免許取得を目指している人もいました。

教習生：
「（ミッション車に）乗る機会はないかもしれないが、仕事とかで使う時があるかもしれないので」

マニュアル車と言えば、多くの人が苦戦するのが「坂道発進」です。

教習生
「クラッチペダルの扱い方が難しくて、（免許取得後）そのまま外に出るのは怖いです」

城北自動車学校 副校長 久保博之さん：
「マニュアル車の特徴であるクラッチペダルの扱い方が雑だと、これがいわゆるエンスト。クラッチペダルの扱い方、これに苦労される教習生が多いです」

MT車“路上教習なし”のまま路上へ出るのは「怖い」

道路交通法の改正により、2025年4月からはマニュアル車の免許取得を目指す人も、オートマ車での技能教習が主となります。従来は34時限あったマニュアル車での技能教習は4時限にまで減り、路上教習はなくなります。

久保副校長：
「1時間もマニュアル車で路上教習に出て行かないので、運転する人が不安になる気持ちはよく分かります。猶予期間に社員教育、車の発注など、課題は山積みです」

納車に半年…教習所はAT車の台数増加に四苦八苦

城北自動車学校では、4月になってもすぐに新課程に移行できないと嘆いています。

久保副校長：
「オートマチック車を使っての教習がほとんどとなる関係上、自動車教習所としては、オートマチック車の台数を増やすという対策をしないといけません。補助ブレーキなどの特殊な装置をつけた車をたくさん発注するので、膨大な時間がかかっています」

城北自動車学校は現在、オートマ車を約40台用意してあります。新課程に対応するには少なくともさらに5台以上は必要で、納車には半年以上かかる見込みです。準備は進めているものの、すぐに新課程に対応できないのが現状です。

今回の法改正には移行期間があるため、城北自動車学校は4月以降も当面、現在の教習課程を継続します。