オーダーメード麺と新商品開発などでラーメン店を支援 ラーメン激戦区、博多のラーメン支える製麺会社
ラーメン激戦区、福岡県の博多の人気店でよく見かけるのが、とある製麺会社の看板です。この会社の麺を使うことが、ラーメン店のブランドを高めるとも言われる中、提供しているのは麺だけではありませんでした。
博多名物・とんこつラーメンの人気店「博多一双」。細い平打ち麺は濃厚なスープが絡み、ほどよい食感を生み出します。注目すべきは店にある「製麺屋 慶史」と書かれた看板。人気店が信頼を置く「慶史」は、2010年設立の若い企業です。
もともと国内外に60店舗以上を展開する有名ラーメンチェーン店「博多一幸舎」の製麺部門でしたが、15年前に他店へ麺の販売を開始。その後、別会社として独立しました。
麺の種類の多さが強みに
慶史を率いているのが一松竜太社長。高校卒業後に「一幸舎」の製麺部門に就職。ベトナムやブラジルなど、海外店舗での製麺室の立ち上げにも携わりました。まさに製麺のプロ。「自家製麺をつくりたい」というラーメン店の需要を感じ、現在の完全オーダーメードの形をつくりあげました。2022年度の売り上げは4億円と、前年度の1.4倍に。その成長を支えるのが、麺の種類の多さです。
一松竜太社長:
「今レシピは400種類は超えています」
多種多様な麺を作るために欠かせないのが「小麦粉」ですが、ほかの製麺会社よりかなり多く、30種類ほどの小麦粉を常備しています。製麺業界の主流は大量生産ですが、慶史は30玉から注文を受け、細かなオーダーに対応しています。
一松社長:
「昔に比べて自家製麺やオリジナル麺など麺へのこだわりが増えました。うまくうちはそこにフィットしたのかな、と」
その手腕はミシュランシェフ監修のラーメン店からも頼られる存在となっています。
ライ麦を使用した麺も
福岡市に店を構える「西村や」は、他店とは一風変わった特徴的な麺を作ろうと慶史に相談しました。
西村や 元永海里さん:
「まるでそばのような、食感も香りもすごく良い麺に面白さを感じました」
試行錯誤し、ライ麦を使用した麺で思い描いたラーメンが実現しました。一方、慶史が今サポートに乗り出しているラーメン店があります。
この日、慶史の担当者と新商品の打ち合わせをしていたのは2024年4月にオープンしたラーメン店「豚煮夢中」です。沖縄で飲食店を複数経営していましたが、福岡に初上陸。食べ歩きをしていたラーメン店で慶史の看板を見かけ、相談したといいます。
豚煮夢中 嘉数亮平代表:
「骨の発注先などを紹介してもらい、ラーメンをつくれる環境をつくっていただきました」
ほかにも慶史は、卸先の店舗に定期的に麺の情報を提供。新商品のアイデアなどを提案しています。こうしたサポートを慶史は麺の付加価値ととらえているのです。
慶史 一松竜太社長:
「県内では、うちは10~15%程度(麺の)金額が高いです。高いと思われないような付加価値をつけたいです」
日本経済新聞社 堀田真優音記者:
「福岡は日本有数のラーメン激戦区です。新規出店が(年間)100を超え、多くのラーメン店が消える中で、慶史は店に寄りそう経営と独自性で高付加価値ラーメンの“陰の立役者”といえます」