使用済みの注射針もヘッチャラ「モノが突き刺さらない手袋」で作業安全に 業界の常識覆す技術

手袋の国産シェア9割を誇る香川県の東かがわ市で、ステンレスを手袋の材料に使い、新たな需要を開拓するメーカーがあります。「金属は縫製できない」という業界の常識を覆して作られた手袋の実力を取材しました。
安全と品質を追求するポルテの防護手袋

中国自動車道の吉備サービスエリアでは、作業員が1時間ごとにゴミを回収・分別していますが、危険なゴミの存在が作業を困難にしています。特に問題なのが、糖尿病患者などが使用するインスリン用の注射針です。この細く短い針は手に刺さる恐れがあり、感染症のリスクも高いです。
防護手袋の必要性

作業員の安全を守るため、防護手袋が必要です。針などが突き刺さらない手袋を手がける会社が、香川県東かがわ市にありました。東かがわ市は手袋生産で国内シェア9割を誇ります。市内にあるポルテは「ものが刺さらない手袋」を作っています。

ポルテでは通常の防護手袋で使う高機能繊維では防げない針刺し事故を防ぐため、小さなステンレスプレートをポリエステルのシートに挟み込む技術を開発しました。プレートをずらして重ねることで隙間を埋め、手や指の自由な動きを確保しています。

ポルテ 竹北 昌成専務:
「手袋屋さんの中では“刺さらないものは縫えない”という多くの思いがありました。ステンレスは刺さらないですから縫えないですよね、と。皆さんトライをしなかったんです」
手袋の品質の安定化

縫製のズレによって隙間ができることを防ぐため、型枠に部品をはめ、決まった位置で縫いつける技術を採用しています。このシステムにより、簡単な教育で誰もが同じ品質の製品を作ることができます。
多様なニーズへの対応

ポルテは1993年創業で、もともと半導体製造装置向けの断熱保温材が主力製品でした。手袋メーカーではありませんでしたが、縫製技術を生かし「刺さらない手袋」の分野に参入。かんきつ類の収穫時のトゲから手を守る手袋など、さまざまなニーズに対応しています。
しかも防護手袋や防護服、靴などの安全保護具の売り上げは右肩上がり。顧客は全国で200社を超えています。
世界唯一の技術と今後の展望

日本経済新聞社 満田将太記者:
「手袋の素材としてこれまで不可能と思われてきたステンレスプレートを採用し、安全性としなやかさを実現したのは、世界でもポルテだけです。商品の質の高さとメイド・イン・ジャパンのブランド力で、今後は国内のみならず海外でも販路の拡大が見込まれます」

ポルテ 竹北専務:
「ステンレスプレートが入って商品がこの世にあるんだ、と。まだ知られていない状況である中で、ステンレスプレートを使ったものによって体を守るであるとか、そういったところをどんどん出していきたいです」