バターを作る時にできる無脂肪乳でできたスイーツ「バターのいとこ」が人気に 広がる未利用食材の活用

バターを作る時に大量に発生する副産物を生かしたスイーツが、お土産として人気を集めています。これまでに使っていない食材を活用し、新しい価値を作り出す取りくみは他の食材へも広がっています。
連日売り切れになる人気みやげ「バターのいとこ」

多くの観光客が行き交う、東京駅に2024年にオープンした「GOOD NEWS TOKYO」で人気のおみやげが「バターのいとこ」です。バターの香りが広がるゴーフレット生地に、トロリとした濃厚なミルクジャムをサンド。1枚300円ほどと決して安くはありませんが、連日売り切れになるといいます。

中でも人気なのが、東京駅でしか買えない「いちごチョコ味」。ほかにも、北海道限定のあんバター味や京都限定の宇治抹茶味など、全国各地の売り場でしか買えない味があり、それがその土地のお土産として定着する仕掛けとなっています。

2018年の販売開始以来、売上は年30億円ほどに成長。その人気の原動力になっているのが、独特のミルクジャムです。
バターを作るときに残る「無脂肪乳」新たな使い道

作られているのは、栃木県那須町。原料となるのは無脂肪乳です。牛から搾った生乳から、バターを作るときに残るのが無脂肪乳。バターになるのは生乳のわずか4%。90%が無脂肪乳として残りますが、あまり使い道がないのが課題でした。
そのため、牧場主の山川さん、以前はバターを多く作れなかったといいます。

森林ノ牧場 山川将弘社長:
「搾った生乳を無駄にしたくないので、9割のスキムミルク(無脂肪乳)がちゃんと売れて、その分、副産物でバターがとれる考え方にしていかないといけない」
そこで山川さんが相談をした会社が、同じ那須町にある「GOOD NEWS」。農産物の直売所やカフェなどを運営しています。

無脂肪乳の使い道を相談された社長の宮本吾一さんは、牧場の無脂肪乳を飲んだときに「衝撃的においしかった」と話します。
GOOD NEWS 宮本吾一さん:
「とってもミルク感があって、でも軽い口当たりの牛乳のようなものに感じられました。これだったら、皆さんに堂々とお届けできるな、と」

そこで宮本さんは、仲間のパティシエと無脂肪乳を煮詰めたミルクジャムを開発。その周りに粗糖が入ったバタークリームを塗って、シャリッとしたアクセントを加えました。
バターにとって親が牛乳だとすれば、無脂肪乳は、いとこのような存在、それが名前の由来です。

発売以来、売り上げはコロナ禍を除き拡大を続け、酪農家も無脂肪乳が売れることでバターを増産できるようになりました。
さらに、ほかの未利用の食材にも取り組みを拡大。酒かすのケーキやチーズの副産物を使った焼き菓子も販売しています。

宮本社長:
「1つの会社だけでやるのではなく、みんなで手を組んで地域の中で会社をつくる考え方。得意なところを一緒にやっていくことで、初めて製品になったと思います」
日本経済新聞社 宇都宮支局 三好博文記者:
「宮本社長は常に生産者の側にたち、安定的にビジネスを続けたいと重ねて強調していました。資本関係にはないものの、地域が1つの商社として団結することで、結果的に事業の継続につながるほか、これが将来的に地域創生の1つのモデルケースになっていくのではないかと考えます」