【参院選/何で選ぶ?】働き方は改善したのに給与も人も減り…“物流2024年問題”その後 現場が期待する「暫定税率の廃止」 実現を阻んでいるのは…?

岐阜県羽島市にある運送会社「丸幸運輸」。主に野菜などの青果物を、西は神戸、東は東京まで運んでいます。ドライバーの労働時間の規制が強化され、運び手不足が懸念された、いわゆる“2024年問題”。物流業界は今どうなっているのでしょうか。その一日に密着させてもらいました。
物流の現場は今…ドライバーの一日に密着

ドライバー歴8年の中園優太さん(33)。総合格闘技の経験があり、今でも週に2~3回ジムに通うのが趣味です。

会社を出発してから運転すること約2時間。午後3時半ごろに、高山市の高山市公設地方卸売市場に到着しました。
自分でフォークリフトを運転して、パレットの上に積まれた段ボールをトラックの荷台に積み込んでいきます。荷物を全て積み終え、午後5時半ごろ、この日の最終目的地である大阪へ向けて出発しました。
中園さんは最近、この荷物の積み方に変化を感じているといいます。
中園優太さん(33):
「昔は自分で全部荷物を手で運んでっていうふうだったのが、今はパレットに載せてある状態で、すぐ積めるようになってきている。時間も1時間でも2時間でも縮まる」

一般的に1回の運送に対して運賃が支払われる運送業界。パレットに乗せるとその分だけ積める量が減るため、以前までは手積みで少しでも多く積むのが当たり前でした。
しかし、2024年問題が取り沙汰されて以降、労働時間を気にしてかパレットに載せた状態で荷物を準備してくれる現場が増えたと言います。

高山を出発して約2時間後の午後7時半ごろ。
中園優太さん(33):
「これ以上走ると多分(駐車場が)パンパンになってきて、サービスエリアに止められなくなっちゃうんで」
このままでは連続運転時間が4時間を越えるため、サービスエリアで休憩を挟みます。
中園優太さん(33):
「(連続運転時間が)4時間で1回(休憩を)取って、30分休憩して、また走るって感じになります」
ここまでの走行距離は約300キロ。大阪の市場まで残り152キロほどを走ります。

そして、午後10時すぎに目的地の大阪市中央卸売市場に到着。ここでも変化がありました。以前なら、この市場では荷物を下ろせるまで待つ“荷待ち”が1時間以上あるのが普通だったそうですが、今回、荷待ちは無くスムーズに荷下ろしへ。
最近はトラックがスムーズに走行できるレーンを市場が確保してくれるようになり、待ち時間がかなり短くなったそうです。
全ての作業が終わり、トラックが出てきたのは午後11時ごろでした。

2024年問題をきっかけに、荷主の協力もあり、負担が減ったように見える運送業務。プラスの面も多くある一方で聞こえてきたのは…
中園優太さん(33):
「2024年問題になってから稼げることがなくなったかなって。もっと仕事したいんだけどできないみたいなのはあります。悪い言い方をすると(給与が)減っているのが現実。5%から10%(減っている)」
一つ一つの配送は効率化されていますが、減った残業代を補えるほどではなく、その分の給与が減っているといいます。

中園さんが務める会社では、運賃の交渉などの努力を重ね、時間あたりの給与はアップ。福利厚生も充実させて、ドライバーをつなぎとめていますが、業界全体では、法改正で働き方改革を促した結果、給与が減り、むしろ仕事から離れる人が増えてしまったというのです。
そんな中、社長が期待をかけるのが、燃料をめぐる議論。
丸幸運輸 炭竃光希社長:
「荷主さんに運賃上げてくれっていうのは簡単なんですけど、上げてくればかりだと荷主さんも厳しいでしょうし、ものの値段も 上がり続けるだけだと思う。軽油の暫定税率を下げていただけることで、ドライバーの給与アップにもつながりますし、運送業界全体が仕事をしやすくなるんじゃないかと」

ガソリンや軽油の価格に、本来の税率に加えてかかっている暫定税率。道路整備などの費用という名目で半世紀も続いていて、1リットルあたりガソリンには25.1円、軽油には17.1円が現在かかっています。
去年12月、自民・公明・国民民主で廃止を合意しましたが、実施する時期は未だ不透明。運送業界を救う一手は、いつ発動するのでしょうか。
いつ実現するの? ガソリン・軽油の暫定税率廃止

ガソリン・軽油の暫定税率について、今回の参議院選挙での各党のスタンスは、自民は「廃止について議論」としているものの、基本的にどの党も「廃止」となっています。
意見が一致しているのに、なぜ未だに廃止されないのでしょうか。
去年12月、自民・公明・国民民主が廃止で合意したものの、時期の明言はされず、いつやるのか不透明なまま。
具体的な進捗がない中、今年6月に立憲・維新・国民民主など野党7党が合同でガソリン税のみの廃止法案を提出。衆議院は通過しましたが、参議院で与党が採決を拒否したのです。
与党は参議院選挙の公約で廃止としているものの、自民は「財源の確保、流通への影響などの課題も踏まえつつ、自動車関係税制全体の見直しと併せて議論を進める」としています。選挙期間に入り森山幹事長の「年度内に実施」という発言もありました。公明は年末の税制協議で廃止時期を決定としています。
いつやるのかという状態が続いている暫定税率ですが、参議院選挙の結果次第で大きく動くということもありそうです。