
設計位置からズレて建つ…蒲郡市役所の違法建築で思い出される『イタリア村』名古屋港の木造禁止エリアに14棟も


蒲郡市役所の新館が、建築基準法に違反していたことが判明しました。設計より3.8メートルずれて建てられたため、周辺に日陰を生じていたのです。かつて名古屋港の「イタリア村」でも、木造禁止区域に木造建物が建てられ問題となり、違法建築は身近なリスクであることが浮き彫りになっています。
■45年間“違反状態”が放置…市役所が建築基準法に違反
蒲郡市によりますと、1980年に建てられた市役所の新館が、周辺の住宅地に3時間以上日陰を作ってはいけないとする建築基準法の「日影規制」に違反する状態になっていました。建物が、本来設計された位置よりも西に3.8メートルずれていたということです。

経緯としては、本館の横に新館を建てた際、本館がすでに設計よりも3.8メートル西にずれており、新館もそれを基準に立てたため同じく3.8メートルずれて完成。このずれた分だけ日陰が伸びてしまったということです。

違法建築について、愛知建築士会の副会長・石井隆司さんによりますと「既存の本館との位置関係を中心に考え、周りの道路や別の建物などとの測量を行わなかったなど、図面と現地の整合性を怠ったのではないか」と指摘しています。蒲郡市役所の担当者によると「西側の日陰を伸ばしている最上階の一部分を削って対応する」ということです。
■身近にも潜む「違法建築」
一言で「違法建築」と言っても広範囲にわたりますが、「私たちもやりかねない違法建築」があるといいます。 愛知建築士会の石井副会長: 「上から見た時に『敷地の空き』を考えて出しているのが“建ぺい率”」 建ぺい率とは「敷地の面積に対して建物をどのくらい建ててもいいか」の割合。地域によって基準は異なりますが、建ぺい率が50%の場合、100平方メートルの敷地に40平方メートルの建物であれば40%で基準内、60平方メートルだと60%となり基準を超えるため違法となります。

石井副会長: 「空いているところに、お子さんの勉強部屋を増築とか車庫を増築した。知らずに超えてしまうことはありますよね」 安易に増築すれば建ぺい率が上がり、違法建築になる恐れもあります。

ちなみに、建ぺい率は細かい決まりが無数にあります。例えば一軒家に多く導入されているカーポート。一般的には4本の柱で囲まれたエリアがすべて建築面積に含まれますが、名古屋市など自治体によっては条例で「緩和措置」をとっていて、さまざまな条件はあるものの柱回りの1メートル分が建築面積に含まれないこともあります。

結果として、同じ面積で建てたとき、2本の柱で建てたカーポートより建ぺい率が低くなることがあるのです。ちなみに建ぺい率は、建物の密集を防いで快適で安全な住空間を確保する目的で作られたもので、圧迫感の少ない開放的な設備は規制が緩和されやすい傾向があるそうです。
■木造建築で条例違反が判明した「イタリア村」
東海地方では過去にも、違法建築が大きなニュースになったことがあります。代表例が2005年に名古屋港にできたイタリア村です。ショッピングモールやレストランなどを集めた施設で水の都・ヴェネツィアの運河など、イタリアの古い街並みが再現されましたが…。

石井副会長: 「あのエリアは伊勢湾台風だったと思いますけど、木造で作ると流されて危ないってことで木造禁止になっていた。それを木造で作ってしまったことで、建物が違法建築と」

名古屋市は高潮の被害を受けやすいため、このエリアでは条例で木造の建物を禁止していましたが、14棟が木造だったことが判明しました。 イタリア村は市から是正を求められましたが、入場者の減少など経営不振も重なって結局2008年に倒産しました。

石井さんは、「違法建築は、地域や条例で細かい決まりがあるため、増築やリフォームをする際は建築士に相談することをお勧めします」と話します。 違法建築は決して他人事ではなく、私たちの暮らしの身近に潜んでいる問題です。 2025年9月5日放送