開港20周年のセントレアが国際空港の中で「1人負け」　みそなどの発酵ツーリズムで打開へ

中部地方の空の玄関口である愛知県の中部国際空港は、2025年2月で開港20年の節目を迎えますが、インバウンドの誘致に苦戦しています。国内の主だった国際空港の中で1人負けともいえる状況です。この状況を打開するために目をつけたのが愛知が誇る「みそ」をはじめとする「発酵食」でした。

国際線利用者数の現状と課題

中部国際空港は、旧正月の時期に多くの外国人観光客が訪れるものの、国際線利用者数はコロナ禍前に比べて未だマイナスの状況です。フィリピンからの観光客は「東京や大阪は満員だが、セントレアはそこまで満員ではない」と話します。この1人負けの状況を打開するために、愛知県の発酵食文化をPRする取り組みが始まりました。

愛知県豊田市にある「のだみそ」は、創業約100年の歴史を持つ味噌蔵。木桶の中で1年以上かけて発酵・熟成させた豆みそが特徴です。伝統的なみそ作りが注目され、外国人観光客も訪れるようになりました。中国のミシュラン星付きレストランの一行がみそ作りを体験。味噌蔵見学を通してみその文化・歴史を学び、みそ料理を堪能しました。

のだみそ 四代目 野田好成社長：
「みそだけではなく付随する桶・蔵の世界観に魅力を感じてもらえます」

発酵食文化振興協議会の設立

みそだけではありません。創業220年、半田市にある「ミツカン」の酢や、碧南市の「九重みりん」。常滑市の酒蔵「澤田酒造」など、愛知はニッポンの食を支える発酵文化の一大集積地なんです。そんな発酵王国・愛知に2024年5月、愛知県では「愛知『発酵食文化』振興協議会」が設立されました。

この協議会には、発酵食のメーカーだけでなく中部国際空港や鉄道会社など100以上の団体が参加しています。「旅の目的は、愛知の発酵食」というスローガンのもと、ホームページで観光のモデルコースを紹介するなど、県をあげて情報発信に力を入れているんです。

発酵食を通じた観光モデルの提案

この日、中部国際空港の地域ブランド共創室の森勇樹主査が「のだみそ」を訪れました。「大きな味噌桶を空港の到着ロビーに展示したい」と企画を提案。これにより“愛知といえば発酵食”というイメージを、外国人旅行者にSNSなどで拡散してもらう狙いがあります。インバウンドの大きな流れを地域に波及させるため、外国人が体験できるコンテンツの開発も進められています。

日本経済新聞社 竜田菜美子記者：
「愛知県は、2026年に国際競技大会であるアジア競技大会を控えています。選手や関係者など多くの外国人が来るため、“愛知といえば発酵食”というイメージを広めるチャンスとなっています」

愛知県の発酵食文化をPRする取り組みは、地域の魅力を再発見し、インバウンド需要を喚起する重要なステップ。今後の展開に期待が寄せられます。