熱中症に似た「めまい」や「ふらつき」は脳梗塞のサインかも　夏に発症が最多の脳梗塞を解説

「頭がボーっとする」「めまいがする」ということはありませんか？　実はその症状、脳梗塞のサインかもしれません。「脳出血」と「くも膜下出血」が冬に多いことから、「脳梗塞」も冬に多いと思われがちですが、日本脳卒中データバンクによると実は、発症件数が一番多いのは夏。「夏の脳梗塞」について調べました。

脳梗塞とは？

まず脳梗塞とはどのような疾患なのか、一宮西病院脳卒中センターの伊藤圭佑センター長に聞きました。脳梗塞が起きるメカニズムは主に2つです。

1つ目は「不整脈」。心臓でできた血のかたまり、血栓が脳に流れて血管を詰まらせるケースです。血栓はエコノミークラス症候群などで心臓以外でもできますが、脳に飛ぶのは心臓からの血栓がほとんどだそうです。

脱水で血液がドロドロになり、血管が詰まる

そして2つ目が「脱水」。暑さで汗をかくと、水分や塩分が失われます。すると血液がドロドロになって、脳の血管が詰まってしまうことがあるんです。どちらの場合も血管が詰まってその先に血液が届かなくなり脳の細胞が壊死してしまう。これが脳梗塞です。夏に特に多いのが、2つ目の脱水が原因の脳梗塞です。

軽い症状の場合、脳梗塞と熱中症は似ているんです。実際に「熱中症だと思って搬送されたら、実は脳梗塞だった」というケースもあるといいます。

脳梗塞と熱中症に共通する症状は以下のとおり。

・めまい
・フラつき
・意識がぼんやりする

これって脳梗塞？　熱中症？　見分け方

脳梗塞には熱中症とは違う特徴的なサインがあります。

・片側の手や足に力が入らない
・ろれつが回らない
・口の片側からよだれが垂れる

「脳梗塞かな」と思ったら、簡単にチェックする方法があります。

両手を前に出して、手のひらを上に向けてください。もし片方の手が下がったり、傾いたりしてしまう場合は、脳梗塞の可能性があります。重症の場合は、脳梗塞も熱中症も意識を失うことがあります。

熱中症であれば、涼しい場所に移して休ませると回復することがありますが、脳梗塞だといつまでたっても意識が戻らなかったり、意識が戻っても片側の手や足だけが動かなかったりします。その場合はすぐに救急車を呼んでください。というのも、脳梗塞は時間との勝負なんです。血栓を溶かす薬の投与や、血栓を取り除くカテーテル治療を行える可能性があるのは発症から6〜8時間以内といわれています。

なぜなら、脳細胞は完全に壊死してしまうと、どんな治療をしても生き返らないからです。そのため対応が遅れれば遅れるほど、命の危険や後遺症のリスクが高くなるんです。

「脱水対策」で夏の脳梗塞を予防する

夏の脳梗塞の予防法は、基本的には熱中症と同じで脱水対策です。血液をドロドロにしないために、喉が渇く前にこまめな水分補給をしましょう。

・寝る前と起床後にコップ1杯の水を飲む
・水だけでなく、塩分も適度に補給
・屋外での作業は涼しい時間帯に短時間で

さらに脳梗塞に限ったことではありませんが、普段からの規則正しい生活が大切です。

・1日3食、食事をとる
・十分な睡眠、おすすめは6時間以上
・軽く息が弾み、汗をかく程度の適度な運動を毎週60分以上推奨

「熱中症かも」と思ったその症状は、脳からのSOSかもしれません。この夏、自分や大切な人を守るために、いつもと違う体調の変化を見逃さないでください。