数十年の「不法耕作」が横行 名古屋・庄内川河川敷の“国有地”に広がる「ヤミ畑」の深層 なぜなくならない?

名古屋駅からも比較的近い1級河川の河川敷で自分の土地ではないのに数十年にわたって野菜を栽培している人たちがいます。この「ヤミ畑」のナゾに迫ります。
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■6月18日:名古屋・中村区
(記者)「名古屋駅から4キロほど離れた庄内川の河川敷です。草や木が生い茂っていますが、一歩足を踏み入れると…英語の看板が立っています。『ここは公有地です』と書かれていますね」
看板には、“national land (ナショナルランド)”=国有地の文字が。しかし…
(記者)「河川敷とは思えない光景が広がっています。ナスに、カボチャ…」
河川敷に広がる野菜畑。一帯全てが国有地というわけではありません。中には自分の土地で栽培している人もいますが、この日、畑で出会った女性に聞きました。
(女性)
Q:ここの土地は?
「ない」
Q:誰の土地?
「建設省(国交省)の土地」
Q:国の土地?
「ここはね。借りてやっているんだわ」
Q:借りている?
「借りとる…勝手にやってとるんだわな」
国有地で不法耕作 20年前からやっている人も
勝手にということは不法耕作、この畑はいわゆる「ヤミ畑」です。
(女性)
「ピーマン、ナス、キャベツ、ネギ、トマト…なんでもあるよ」
Q:何年前からやっている?
「何十年だろうな」
女性が作る野菜は10種類だと言います。
別の男性は…。
(男性)
Q:自分の土地ではない?
「みんな国のやつ」
男性の知り合いが20年ほど前にやっていた「ヤミ畑」を引き継いだと言います。
(男性)
Q:20年やっていて「やめてください」とは言われない?
「言われとるよ。回ってくる、国交省が。『国の土地だから農作物を作らないでくれ』と」
こうした「ヤミ畑」の違法性について、弁護士に聞きました。
(正木健司 弁護士)「許可なく国有地を利用すれば、『河川法』に違反することになる。1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。相当重い罪になるのかと思う」
勝手に小屋まで…なぜ撤去できない?
「ヤミ畑」には農機具や肥料、そして収穫した野菜などを保管する小屋まで建っています。
(男性)「おれがここにちょっとトタンとかやって、屋根を作って物を置いている」
国はこうした建築物の危険性について指摘します。
(中部地方整備局 庄内川第一出張所 松岡裕幸 所長)
「流されてしまって、河川施設を痛めてしまったり、橋などに引っかかって水が流れにくくなることも考えられる」
「ヤミ畑」の男性に聞きました。
(男性)
Q:洪水などで建物が流れると危ないが?
「まあ…危ない」
国交省の庄内川河川事務所は毎日のようにパトロールを行っていますが、すぐに行政代執行などで撤去することは難しいといいます。いったい、なぜ?
(中部地方整備局 庄内川第一出張所 松岡裕幸 所長)
「個人の『財産』という側面もある」
Q:他人の土地でやっていても「財産」?
「そうですね。行政代執行を実際に行うには、いろいろな手続きを経なければならない。そういった意味でも、なかなかハードルが高い」
土地の境界が不明確? 新たな問題も
撤去するにも手が出しづらい問題が他にも…
(中部地方整備局 庄内川第一出張所 松岡裕幸 所長)
「民間の土地と国の土地との境目が明確でない箇所も多い」
この河川敷には国や名古屋市の土地と、個人の土地があります。土地の位置関係や地番などが書かれた「公図」はあるものの、正確な境界を定めるには地権者らの立ち会いが必要です。
現状、どこからどこまでが国の土地なのかはっきりしない場所もあるといいます。
(男性)
Q:(20年以上も続けている立場から)率直な思いは?
「やめないかんと思っとるんだけど、なるようになるしかない」
Q:「なるようになる」とは?
「『出ていけ』と言われたら出ていくだけ」
河川敷に広がる「ヤミ畑」気になる動きもあるようで…
(男性)「ここ2~3年中国人が来てバババっと耕した。好き勝手やっている」
外国人が増えたというのです。
別の日に取材すると…
外国人まで「ヤミ畑」 問題の解決は?
(中国人男性)
Q:何を育てている?「ジャガイモ」
Q:これはキャベツ?「キャベツ、キャベツ」
畑にいたのは中国人男性2人。バケツにはインゲン豆とキュウリが入っていました。
(中国人男性)「キュウリおいしいですよ、どうぞ」
誰の土地なのか尋ねると…
(中国人男性)
Q:ここは誰の土地?「分からん」
Q:誰も使っていないからやっている?「ハハハ…」
河川事務所も、外国人が畑を作っている事実を把握していますが…
(中部地方整備局 庄内川第一出張所 松岡裕幸 所長)
「巡視の際に見つけて声掛けして、言葉が通じないと言われることもある。文化の違いもあるかもしれないが、人の土地という概念が河川敷はないのかもしれない。新たな課題かと思っている」
国交省は河川敷の「ヤミ畑」問題の解決には超えなければならないハードルがあるが、著しく問題のある行為が続く場合は、行政代執行も検討するとしています。