禁止が増える漁港での釣りを予約できるアプリが登場 利用料金還元で漁港の活性化にも

釣り人と漁業関係者とのトラブルから、釣りを禁止する漁港は少なくありません。そんな中、静岡県の伊豆半島の田子漁港では、一般客の釣りが復活しました。
一役買ったのはスタートアップが開発したアプリです。一体、どんな仕組みなのでしょうか。
釣り場を予約できるアプリ「ウミゴー」

釣り客が利用しているのは、国内初の釣り場の予約ができるアプリ「ウミゴー」です。利用者はアプリで漁港と日時を予約し、当日には巡視員が予約者を確認します。この「ウミゴー」によって、釣り人による無断駐車やゴミの放置といった問題が解決しました。
また、釣りができるエリアをアプリで指定しているため、漁業者とのトラブルも回避できます。利用者からは「安全で便利」「混雑を気にせず使える」と好評です。
「釣り禁止」の悲しみから生まれた新システム

この画期的なシステムを開発したのは、株式会社ウミゴー社長の國村大喜さんです。IT企業でソフトウェア開発に携わったあと、西伊豆町へ移住。しかし、釣りを満喫しようとしていた矢先に、田子漁港が釣り禁止になってしまいました。
「悲しくて、マジかと思いました」と当時の心境を語る國村さん。この出来事が、アプリ開発のきっかけとなりました。國村さんは「この方法で解決できるかもしれない」と考え、町の役場にソフトウェアのひな形を持ち込んだといいます。
地域全体に広がる経済効果

試験運用を経て、2024年8月に正式導入されたこのシステムは、これまでに延べ1万4192人もの利用者を獲得しました。釣り人が支払う利用料の一部はアプリの運営費に充てられ、大半は漁協に還元されます。
「ウミゴー」を取り入れた田子漁協は、この収益で水道やハシゴを設置するなど、漁港の整備を進めているそうです。伊豆漁業協同組合田子支所の支所長・真野創さんも「漁協が自らお金を稼いで、漁港整備に使えることがすごく良い」と話します。

田子漁港に続いて導入されたのが、西伊豆町の仁科漁港。アプリ利用者による経済効果は地域全体に広がり始めています。漁港近くの直売所では、「釣りを楽しんだあとの利用者が、お土産を買ってくれる流れができた」といいます。
西伊豆町役場 地域おこし協力隊
大政勇太さん:
「『ウミゴー』のお客さんは、ファミリー層が多いです。当店でお土産を購入してくれるようになったので、ほかの飲食店にもそうした効果が出ているのではないかと思います」
釣り場・サービスの取り扱いを100件以上に増やす

2025年4月には兵庫県神戸市の六甲アイランドでも導入され、全国への展開が加速しています。國村さんは釣り場管理だけでなく、釣りイベントの開催など新たなサービスも展開。3年後には釣り場・サービスの取り扱いを100件以上に増やすことを目標にしています。

日本経済新聞社 静岡支局
村上和記者:
「ホテルやツアーの予約がインターネットで当たり前になったように、釣りもアプリで予約する時代が来たのかもしれません。今後、漁港が新たな観光地となれば、インバウンド需要の受け皿になるかもしれません」