
思い出が消える「ビデオテープ2025年問題」あの日の記憶を残したい…ダビング専門店に密着

ビデオテープの映像が見られなくなる「2025年問題」をご存知でしょうか?思い出の詰まった映像を残そうとする人たちの思いを取材しました。
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かつてどこの家庭にもあった、人々の思い出を彩る「ビデオテープ」。実は今、危機を迎えているんです。それが「ビデオテープ2025年問題」。テープの耐用年数は約20年。それを超えると再生できなくなる可能性が高くなります。
また、再生機のビデオデッキもすでに製造が終了して8年が経ち、今では修理もできなくなっています。
そんな中、街の専門店には映像を残そうという人たちが続々と。
「子供がちょうど結婚するので(結婚式で)流したいですね」
「姉が今闘病中で…小さい頃の映像が見たいって言ったので」
消えゆく思い出のビデオテープ。残そうとする人たちの思いに迫ります。
なぜダビング専門店に?
名古屋駅地下街にあるタッグアルファ。ビデオテープをDVDや動画データにダビングする専門店です。社長の山口さんはこのサービスを始めて約20年。
(タッグアルファ 社長 山口直人さん)
「しょっちゅう見るものではないけどね。月日が経てば経つほど見るときは面白いかもしれない」
まず訪れたのは、愛知県豊田市に住む60代の男性。この店には5年前から通う常連です。
(タッグアルファ 山口社長)「この前、5つ預かったんですけど、16番のテープが(途中で切れて)後半はダメでした。再生するとちょっと映りかけるけどだめ」
(愛知・豊田市在住 60代男性)「テープは良いものを使っていたつもりなんだけどなぁ」
ボランティアで地元の矢作川の清掃活動を長年行ってきたという男性。テープを持ち込み始めたきっかけは、これまでテレビなどで放送された矢作川の映像を若い人たちに見てもらおうと思ったから。
(愛知・豊田市在住 60代男性)「環境教育などに携わっているので、昔の映像がないとスタートがわからない。やっぱり記録ビデオは後々の人に残しておきたい」
でも、最近持ってくるテープは川の映像ではなくなっているそうで…この日持ち込んだテープには、かわいらしいネコが映っていました。
撮った本人も忘れてしまっている何気ない瞬間が残っているのもテープの魅力です。
続いて訪れたのは、初めて依頼したという50代の女性。持ち込んだテープは50本以上。
生まれたばかりの映像も 家族の大切な“瞬間”が詰まったテープ
(50代女性)
「“2025年ビデオテープ問題”と、子どもが結婚するので、そろそろまとめておこうと思った。それがきっかけです。(結婚式で)流したいですね」
ほとんどのテープは撮ったきりで、今まで見返すことはなかったといいます。
(山口社長)「生まれたばかりの映像もあるんでしょうね」
(50代女性)「あるかもしれない」
(山口社長)「97年とか…」
(50代女性)「97年生まれですね」
(山口社長)「じゃあこれかな、7月13日(って書いてる)」
(50代女性)「あ、7月に生まれています」
流してみると…
(当時の映像)
「きょう病院から初めて家に帰りました。今おっぱい飲んでご機嫌なのに…うつ伏せで寝る方がいいのかな」
(記者)「当時は夢中でしたか?」
(50代女性)「運動会の場所取りなんか夜中から行っていましたよ。お母さんたちが席を取りに行って、途中で父親とチェンジして。お母さんチームはお弁当作るのに家に帰ったりして…大変でしたけど楽しかったですよ。子どもって楽しいですよね」
「涙をポロポロ流し『久々に会えた』って言うんです」
事情を聞いた後にお客さんが持ってきた映像を見るのが、山口さんの一番の楽しみです。
(山口社長)
「『大丈夫?痛くない?』とか(映像内のやり取りを)聞いていると、よっぽど可愛いんだなって思いますよね。みんな道は違えど、生きてきたんだなと思いますよね」
街の電気屋さんを営んでいた山口さんがダビング専門店を立ち上げたのは、約20年前。きっかけはある8mmテープを持ってきたお客さんとのやり取りからです。
(山口社長)
「『ここ(フィルム)の中に、うちの夫がいるから』って言うんだよね。『夫にぜひ会いたいので何とか見られないだろうか』って。ビデオにしてあげた。(映像の中の)旦那さんを見た時に、涙をポロポロ流して見ていたんですよ。その時に『あ、映っている』って言うかなと思ったら、『久々に会えた』って言ったんですよ。今までないなぁ。『こういう仕事がしたいな』って思ったのが始まりですよね」
この日最後に訪れたのは、数日前に大急ぎで注文をしてきた20代の女性。
(20代女性)
「ビデオができるって両親に話したら、『良かった良かった』って言っていた」
テープは2本。中身は女の子の何気ない日常が。ダビングを急いだのには理由がありました。
闘病中の姉のため…急いでダビングを依頼
(20代女性)「姉がいま、闘病中で…『(自分の)小さい頃が見たい』って言ったので、すぐにDVDにしようと思って」
(山口社長)「それで急いでみえたんですね」
(20代女性)「 他だと(ダビングに)3か月かかると言われた」
ただならぬ気配を感じて、山口さんも急いで仕上げたと言います。
(山口社長)「お姉さんと一緒に見ていただいて」
消滅の危機を迎えるビデオテープ。ダビング店にカメラを向ければ、人々の心の片隅にある“あの日の記憶”が見えました。
(山口社長)「思い出を残していきたい。だからみんな写真や動画を撮るのかなって。(ビデオテープには)人生が映っているので、途絶えることなく継続していくのは大事なことだし、自分にとってそれは楽しいこと」