大阪の町工場がアナログ計器を「デジタル化」メーターに取り付け スマホに計測データ送信し遠隔監視も
ものづくりの現場に残る多くのアナログ機器。これを一瞬でデジタル化するという、魔法のような製品が注目を集めています。一体どんな製品なのか、大阪の小さな町工場から生まれたヒット商品を取材しました。
大阪府内で開催された中小企業の展示商談会で、ひときわ注目を集めたのが「木幡計器製作所」のブースです。このブースで展示されていたのは、アナログ計器を簡単にデジタル化する小さな部品「サルタ」。同製品は、東レやトヨタ車体などの大手企業からも注目されており、来期には1万台、売り上げ3億円を見込んでいます。
「サルタ」の開発背景
木幡計器製作所は、1909年創業の老舗メーカーで、船舶用ボイラーの蒸気圧などを測る圧力計を製造しています。同社の圧力計は、戦艦「大和」にも採用された実績がありますが、アナログ計器のデジタル化が課題となっていました。そこで開発されたのが「サルタ」です。
簡単な取り付けとデジタル化
「サルタ」の取り付けは非常に簡単。圧力計のガラスを外し、針の中心に磁石を装着し、その上から樹脂ガラスと一体化したサルタを取り付けるだけです。磁気センサーが針の角度を読み取り、無線でデータをパソコンなどに送信します。この簡便さが評価され、大手企業からも注目されています。
医療現場での活用事例
大阪市内の病院では、酸素ボンベの貯蔵庫にサルタを導入しています。これにより圧力計の針の位置がスマートフォンに表示され、遠隔での監視が可能になりました。これまで毎日現場に行って確認していた手間が省け、大変便利になったといいます。
「デジタル計器に取り換えれば良いのでは」と思うかもしれませんが、デジタル機器の電源工事は費用や手間がかかります。サルタの電源はボタン電池で、約1年間動作し、無線でデータを送るため配線工事は不要です。この利便性から、製油所でも導入試験が始まっており、「防爆」仕様のサルタも開発されています。
潜在的なニーズと今後の展望
国内では毎年、圧力計だけで1千万台以上が製造されており、デジタル化の潜在的なニーズは大きいです。
「0から1の新しい発明は難しいですが、さまざまな技術を組み合わせることで、新たな付加価値を生み出せます」と木幡計器製作所の木幡社長。今後も技術交流を通じて、さらなる革新を目指しています。
日本経済新聞社 堺市局 高橋支局長:
「木幡社長は中小企業の技術交流会に顔を出し、最新の情報を収集していました。今回のサルタも木幡社長が、『こういう事を考えているんだけども』と話したところ、『センサー』『読み取った情報をどう伝えるか』といったところで、何社かの中小企業と協力体制を作り、開発にこぎつけることができました」
「サルタ」はアナログ計器のデジタル化を簡単に実現することで、多くの業界での活用が期待されています。