キャンプ特需が終わり各企業が戦略見直しへ アルペンは接客生かした「客目線のテーブル開発」がヒット

アフターコロナでのキャンプ特需は終わったとも言われる中、キャンプビジネス最前線について、中日BIZナビ編集部の織田龍穂記者に聞いていきます。

キャンプ用品の市場規模を見てみると、キャンプは2010年代半ばからお笑い芸人が楽しむ動画や、女子キャンプの漫画のヒットなどでブームに火が付きました。2011年には465億円だった市場規模が、2019年には753億円まで伸びました。
2020年にコロナ禍に突入すると、「密を避けながら楽しめるレジャー」として人気が高まり、2021年には998億円にまで成長。しかし、2023年5月に新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行し、レジャーの選択肢が多様化すると、2024年には698億円にまで落ち込みました。

キャンプ用品業界の有名企業「スノーピーク」が発表した2023年12月期決算では、純利益が前の期に比べ99.9%減少したことが話題となりました。コロナ期に利益を上げていた反動と考えられますが、衝撃的な数字です。

スポーツ用品大手のアルペンが販売した「アルミユニットテーブル」は、キャンプ愛好家の間で人気のグッズ。この商品はキャンプブームが落ち着きを見せた2023年4月に発売されたものですが、これまでに4万点が売れるヒット商品となりました。

高さの調節ができ、付属部品を組み合わせて多様な使い方が可能です。
アルペンナゴヤ 梶山大貴店長代務:
「入ってきたときは即完(売)で、もうずっと入荷待ちで予約を受け付けている状態が続いていました。キャンプをしたい人は、以前と比べてやっと少し増えてきているので、そのお客さまがこの価格帯で選んでもらえるので、すごく反響をいただいています」

アルペンの岡本眞一郎常務執行役員は、高価なキャンプ用品でも並べれば売れる時代ではなくなったといいます。そこでアルペンは、客の意見を聞くことが多い小売店の利点を生かし、客目線でPB商品の開発を強化しました。
岡本さんは「キャンプ用品市場は、本当に好きな人が自分なりのスタイルに合う道具を選ぶようになっている。新たなキャンプの楽しみ方やスタイルをどんどん発信していきたい」としています。

さらに、キャンプ場への影響も注目されています。岐阜県恵那市の「飯地高原自然テント村」では、2019年にリニューアルオープン。2020年には年間利用者が約1万人に増加しました。しかし2023年は約8200人、2024年は約6200人と減少しています。

管理人の加納大士さんは、「ブームが落ち着いたことで再開した人や新たに始めた人がいる。キャンプ自体は終わっていない」と話しています。
食事の準備などを手軽に済ませたい新たな顧客層を獲得しようと食材を提供できるカフェレストランの新設を進めています。また、現在でも当日受付ができる木工体験や絵本の読み聞かせ、星空観察会などを積極的に開いているほか、秋にかけて親子キャンプ体験会やソロキャンプイベントなども計画しており、体験メニューやイベントをさらに充実させていく考えです。
加納さんは「ブームにとらわれない形で細く長く続けていける場所にしたい」と意気込んでいます。

キャンプを取り巻く市場の今後の見通しについて、日本オートキャンプ協会の堺廣明事務局長は、「キャンプは日常的なレジャーの選択肢の1つとなり、社会へ浸透した状況は続いている。キャンプ市場は緩やかな右肩上がりが続いていくのではないか」と分析しています。
(2025年7月28日放送 中日BIZナビ共同企画「東海ビジネススコープ」より)