
台風情報の見かた 早めの備え!接近したら気象情報をこまめにチェック!【暮らしの防災】

台風の季節がやって来ます。台風は、雨・風・高波・高潮に加え土砂災害、浸水害を引き起こします。防災を考える時「南海トラフ巨大地震に備えましょう」と、大地震・大津波に関心が行きがちです。しかし私は、防災のベースは「毎年やって来る台風への備え」で、それに合わせて「地震・津波への備え」があると考えています。
今回は気象庁が発表する台風情報の見方、活用の仕方です。言うまでもありませんが「早めの準備」「早めの避難」、そして「外れてよかったね!の文化づくり」です。
<7〜10月は台風のピーク いまが備えのタイミング>

気象庁のデータでは年間約25個の台風が発生、約12個が日本から300 km以内に接近、約3個が日本に上陸しています。台風は7月から10月にかけて最も多くなり、これからがシーズンです。台風が接近してから準備を始めると、ホームセンターなどで対策グッズが品薄になる可能性があります。「シーズン始めの今のうちに準備」しておけば、後々バタバタしません。
また、すでに準備してある非常持ち出し袋の中身、非常食の賞味期限、電池のチェックなどをしましょう。いずれも南海トラフ巨大地震への備えにもなります。
<広域の天気図に現れたら情報チェック開始>

台風は6月と11〜12月は西進しフィリピンや南シナ海に進む傾向があります。そして台風シーズンの7〜10月は、西〜北西に進んだあと太平洋高気圧の縁をまわるように北東方向に向きを変え(転向と呼びます)、本州に接近しやすくなります。
具体的に台風がどんな進路をとるかは、その時の上空の風の状況・気圧配置によります。まずは「広域天気図に熱帯低気圧や台風」が現れたら、気に留めるようにしましょう。
<進路予想図 接近してきたら備えを再確認>

台風(熱帯低気圧も)が日本列島に近づいてくると、気象庁は位置や強さなどを3時間ごとに発表します。
【×印】=現在の台風の中心
【赤い太実線の円】=暴風域 25 m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性のある範囲
【黄色の実線の円】=強風域 15 m/s以上の強風が吹いているか、吹く可能性のある範囲
【青い実線】=現在までの台風経路
【白い破線の円】=予報円で、台風の中心が到達すると予想される範囲
気象庁は、予報した時刻にこの円内に台風の中心が入る確率を70%としています。円は台風の大きさの変化ではなく、台風の進路予報を表します。予報円の外側を囲む赤色の実線内の領域は暴風警戒域で、台風の中心が予報円内に進んだ場合に5日(120時間)先までに暴風域に入るおそれのある範囲全体を示しています。
進路予想図で、「自分が居る場所・関係している場所」と「台風の進路」をチェックしましょう。「到達予想の2日ぐらい前までに準備」を整えておきたいものです。
<可航半円・危険半円 台風の右側?左側?>

台風は進行方向の右側の風が強いという特徴があります。台風自身の風に台風を押す風が加わるためで、右側は「危険半円」と言われています。一方、左側は台風自身の風と台風を押す風が衝突し、風が弱まるので「可航半円」と呼ばれます。
この「航」は、船舶が航行するの「航」です。海を航行する船舶にとって台風は脅威です。台風の左側より右側の方が、被害が大きくなる恐れがあるので注意して下さい。
<台風のコース スピードが変わる場合も 情報をこまめにチェック>
台風の強さ(中心気圧や最大風速)・台風が進むコースは、大きく変わる場合があります。常に最新の予報をこまめにチェックする必要があります。接近が早まるケース、遅くなるケース、さまざまです。こまめなチェックが一番大切です。
<避難は早目に 台風予報が外れたら「よかったね」>
台風での避難は、強い風が吹いてきてからとか、雨が強くなってきてからでは危ない場合があります。気象庁や国土交通省は、近年、共同で記者会見を開いて「警戒や避難」を呼びかけています。この会見での情報が、避難を考える上で重要です。
また予報が外れて「台風の影響が小さかった場合」は「外れてよかったね」と考えましょう。避難が空振りになっても「逃げる必要はなかったじゃん」ではありません。「避難の練習、訓練をやった」と考えましょう。
海に囲まれた日本の気象環境は、かなり複雑です。どんなに進歩しても気象解析技術には限界があります。だからと言って逃げないのではなく「まずは避難」。そして大きな被害がなかったら「外れてよかったね」です。
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被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。
■五十嵐 信裕
東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。