
地域に再び輝きを 真珠小屋を地域再生の拠点となる宿泊研修施設「うみらぼ」に 三重・志摩市

故郷の真珠小屋に輝きを取り戻したい―。
かつて明治時代以降の全盛期には、真珠の養殖や加工に関連した作業を行う真珠小屋が英虞湾岸に1300軒ありました。しかし、作業者の高齢化、担い手不足により英虞湾の真珠養殖は衰退して以前の輝きは失われ、現在、空き家となっている真珠小屋は約300軒あるといいます。
地元の志摩市出身である川野晃太さんは2024年4月に真珠小屋を改修し、宿泊研修施設「うみらぼ」を始めました。

うみらぼとなる以前の小屋は、川野さんの祖父や父が運営してきた真珠養殖の作業場です。川野さんは小屋の改修にあたって、「特別な施設に再生すれば、地域の活性化につながる」と考えました。

生まれ変わった真珠小屋は、観光のための宿泊施設というだけではなく、地域の資源をどのように活用すれば地域の課題が解決できるのかを研究する拠点として再出発。地域の内外から知識や技術が集まり地域の活力を生み出すための実証実験を行う壮大な実験室をイメージし、「うみらぼ」と名付けられました。

うみらぼは1日1組限定の貸切制。英虞湾の奥まった地点にある船着き場から、小型船に約10分乗って湾内の入り組んだ場所へと向かいます。船が停泊所に係留され桟橋を渡ると、木造の小屋に到着。

小屋のある場所は後方に山林が迫り、孤島の雰囲気を漂わせています。
小屋は最大8人が宿泊でき、小屋の外には特設のサウナがあります。トイレの屋根は真珠養殖用のイカダを再利用し、屋外の電灯は海に浮かべる球形のガラス製ビン玉を使っています。

川野さんは「船でしか行けない非日常で特別な場所を演出し、完全なプライベート空間を提供します」と話します。これは、静けさが保たれた領域で、ひとつひとつの会話を大切にしてほしいという配慮によるものです。
施設では、海洋技術や地域創生に関する勉強会やセミナーなども開催されています。
オープンから1年ほどが経過し、川野さんによりますと、これまでに約1000人の宿泊・研修客が利用したということです。
研修で利用した企業の中には、2か月に1回の頻度でその後に訪れるケースも。国外からの外国人客も、約1割を占めます。中東にある国の野球チームの代表監督が訪ねてきたこともあったそうです。宿泊予約は国内外を問わず、インターネットを介してのみ受け付けています。

うみらぼの運営に乗り出す以前、川野さんは、使用されない真珠小屋がこのまま放置されていると老朽化が進み、再利用の道はさらに途絶えてしまうと危惧していました。
地元出身でこの地域の事情に精通している川野さんが一歩を踏み出し、地域再生を図るための拠点づくりに取り組み始めたといいます。

2棟目のうみらぼを設置する計画も進んでおり、最新の海洋技術が集積する拠点を築くために企業の誘致を継続。AI(人工知能)や情報通信技術(ICT)を駆使して海洋生物を効率よく育成するスマート養殖のほか、ロボットを活用して海洋の管理、資源の保護を行う環境ロボティクスといった最先端の海洋技術は、今後の発展が期待される分野とされています。
なお、宿泊費は2名あたり1泊2日で平日4万円~、土日祝6万円~となっています(税込み価格。25年5月12日~。要確認)。
詳細は、公式サイト https://umilabo.co.jp/bookinghub でご確認を。