
楽しむはずの登山が…子どもの低体温症 本音を言えない子も 対策は“頭・首”を温める

夏休みが近づき、登山を親子で楽しもうと計画を考える方も多いかもしれません。登山を計画するにあたり、子どもの「低体温症」について、対策や注意点を国際山岳医に聞きました。

富士山の診療所で登山者の診療にあたる国際山岳医の大城和恵医師によると、低体温症は主に「震え」「寒い」「元気がない」などの症状があげられます。
大城医師は『子どもは大人より基礎代謝が高く熱を産み出す働きは強いのですが特に体の小さな子どもは、体の中に蓄えられるエネルギーが少なく、体の表面積が相対的に広いため、熱が逃げやすくなります。このため、体温を維持するエネルギーを早く使い果たしてしまい、大人より低体温症になるリスクが高まる』といいます。
また、「元気がない=高山病」と思い込み、親が子どもの低体温症を見過ごしたり、子どもが親の前で症状を我慢したり、意思を伝えないこともあることから、子どもが低体温症になっていることに親自身が気付かないことが多く、症状がいつの間にか進行して、気付いたときにはかなり重症化していたケースもあるといいます。
低体温症への対策

子どもに低体温症の症状が見られたら、以下のような対応を早急にしてほしいとしています。(大人にもあてはまる対応です)
□エネルギー源になるものを食べる
・あんぱん・カップラーメンなど「炭水化物」を食べる
・特に「あんぱん」は、あんこに含まれているブドウ糖が血糖値を上げ、エネルギーになる他、パンはゆっくり消化されるため、持続的なエネルギー源になる優れもの
□頭・首を温める
・頭部や首は熱が奪われやすい場所なので、帽子・フード、マフラーなどを身に着けて保護する(特に乳幼児は頭部から熱が奪われやすい)
□湯たんぽを持たせて身体全体を温める
・身体に熱を加える(与える)ことで症状が劇的によくなることもある
・湯たんぽで温めるとき効果的な場所は「胸」。心臓を温めることで温かい血液が全身に巡る
・低体温症が進んだ状態で「手足」を温めると、冷たい血液が心臓に入り込み体温がさらに下がり逆効果になるので注意
・カイロは温める面積が小さいため使っても効果は薄い
□防寒着・保温着は必ず持っていく
・夏山でも標高が上がると気温はぐっと下がるため、防寒着・保温着はいざというときのためにも持っていく
親は子どもの気持ちに向き合って

8合目(3250メートル)にある富士山の診療所に来た6歳の女の子。朝4時に自宅を出てマイカーで移動し、車酔いになり、朝食は吐いてしまいました。5合目に到着した時は、吐き気がまだあり、少しだけ食べたものの、その後水分も食べ物も摂れず、それでも頑張って登ってきたそうです。診療所に来た時には低体温症に加えて高山病、脱水だったといいます。
大城医師は『無理して登頂を果たせば成功体験につながるかもしれないけど、親の前で「登りたくない」「体調が悪い」と本音を言えない子も多く、旅行自体にストレスを感じる子どももいることから、子どもの思い出作りになるように、親は冷静になって気持ちに寄り添い、無理なく登山計画を立てて、「安全」と「登山の楽しみ」の両立を図ってほしい』と訴えます。