女性6人から1億6000万円の結婚詐欺、被害女性が裁判を傍聴 懲役8年求刑の男に「ふてぶてしい…」

名古屋の男2人が女性の恋愛感情を利用し、複数の女性から計約1億6000万円をだまし取ったとされる結婚詐欺事件で25日、裁判が開かれました。被害女性の1人が現在の心境について語りました。
「一緒になろうとか、結婚して幸せになろうとか。この人と結婚できるっていう気持ちで信じ切っていました」(被害者の女性)
詐欺の罪に問われているのは、いずれも名古屋市東区の無職、「黒瀬舟」こと江尻舟一被告(51)と「吉野ゆうき」こと武田佑氣被告(33)です。
起訴状などによりますと、2人は女性が江尻被告に好意を持っていることを利用して結婚を約束し、「下請け業者に支払う工事代金が必要」などとうそを言って、女性6人から計約1億6000万円をだまし取った罪に問われています。
これまでの裁判で、2人は起訴内容を認めています。
「社長、財布がない!」「どうしよう」

6人の被害者のうちの1人、愛知県に住む40代の女性。
2022年、マッチングアプリで江尻被告と知り合いました。
江尻被告は会社の経営者を騙り、武田被告は江尻被告の社長秘書兼運転手と名乗りました。
江尻被告と初めて会った時の印象について女性は――。
「私もその時婚約者がいて、婚約破棄されて精神的に弱っていたので、気持ちを分かってくれる感じがあったので、優しい方だなという印象です」
女性と江尻被告は知り合って1カ月ほどで交際に発展。
ほどなくして、社長をかたる江尻被告と秘書をかたる武田被告と3人で三重県内のレジャー施設にデートに行ったといいます。
その時、レジャー施設のトイレに行って戻ってきた2人が、焦った様子で話し始めたといいます。
「社長、財布がない!かばんがない!」(武田被告)
「取引先に3億円振り込まきゃいけない金がある。どうしよう、どうしよう」(江尻被告)
「結婚できると信じ切っていました」

実はこのやりとり、女性から現金をだまし取るための芝居でした。
しかし、焦った様子の江尻被告を見た女性は、自ら230万円を貸してしまったといいます。
「『取引先の社長から罰金でお金を払えと言われていて、払わないと名古屋でのビジネスができなくなってしまう』と言われて、『貸してほしい』ということも言われたので、80万とか60万とかいう金額を私はちょっと渡してしまって」
女性は最終的には800万円ほど貸しましたが、670万円がいまだ返済されていません。
女性は江尻被告から結婚をにおわされていました。
「最初は本当に私の気持ちを考えて、理解してくれる優しい感じだった。何日かたったあとに、おつきあいの話が出て、結婚の話が。一緒になろうとか、結婚して幸せになろうとか。この人と結婚できるっていう気持ちで信じ切っていました」(被害者の女性)
しかし、結婚の約束は守られませんでした。
「私にお金がないとなると、一切江尻とは連絡が取れなく…」
武田被告だけがメ~テレの取材に応じる

女性は逮捕された2人と拘置所で面会し、江尻被告に対しては厳しい刑を望んでいます。
「江尻被告に『私に対して何か言うことはない?』と聞いた時に、用意された文面を読み上げるかのような棒読み。お金を返済してもらえるか聞いたのですが、言い訳とか突っかかるような感じで言われて、反省の色が見えなかったです。お金が江尻被告から全額戻ってきたとしても、許せない気持ちはあります」
2人のうち武田被告だけがメ~テレの取材に応じました。
「言い訳になってしまうが、江尻被告に命令されていた。ただ詐欺事件の重要な役割を果たしてしまった。自分がいなかったら救えた被害もあったと思う」(武田被告)
武田被告が女性へ宛てた手紙には、詐欺行為の謝罪と後悔がつづられていました。
女性は武田被告に対しては江尻被告とは違った印象を受けたといいます。
「私個人の気持ちですが、罪を償うということと反省の色が見えたので、私は減刑を求めます」
求刑は懲役7年と8年、8月27日に判決

25日の裁判で行われた被告人質問。裁判官などから詐欺に手を染めた経緯について問われた江尻被告は――。
「もともと建設業をやっていたが、元請け業者に飛ばれたりして、借金を背負ってやめた。マッチングアプリで知り合った人に『お金を貸してほしい』と言った時、簡単に貸してもらえたのがきっかけ」
一方の武田被告は――。
「江尻被告に生活の面倒をみてもらっていたため、江尻被告に見放されたら生きていけなくなるという恐怖感があった。江尻被告から『お前は捕まらないから大丈夫だ』と言われた」
検察側は、「金銭被害のみならず被害者の真剣な恋愛感情をもてあそんでいる」などとして江尻被告に対しては懲役8年、武田被告に対しては懲役7年を求刑しました。
これに対して、弁護側は江尻被告について「友人が社長を務める会社で働き、被害弁済をすることを誓約している」などとして短期の実刑判決を、武田被告については寛大な判決を求めました。
判決は8月27日に言い渡されます。
裁判を傍聴した被害者は――。
「江尻被告は最初の頃と一緒で、ふてぶてしい感じでした。返済していくと言っていたが、返済する気はない。具体的な内容も伝えられていないし、返済する気があるのかなと思いました」