2万人に1人アルビノという病 認知されていない弱視との闘い『チャント!特集』
生まれつき肌や髪の色素が少ない「アルビノ」という病気、国の難病にも指定されています。アルビノの症状に関してあまり知られていないのが「弱視」いう目の障害。メガネによる矯正も難しいと言われています。病を受け入れ力強く生きぬく、10歳のアルビノを患う少女の日常を取材しました。
アルビノ(眼皮膚白皮症)の症状とは
三重県に住む貞廣泉水さん(10歳)は、生まれつき肌が白く、髪の毛は金色です。これは、肌や髪の毛の色を構成するメラニン色素が少ないアルビノのためです。眼皮膚白皮症(がんひふはくひしょう)と呼ばれており、先天性の遺伝子の病気。2万人に1人の確率といわれるアルビノは国の難病に指定されています。
また見た目だけではなく、目にも問題を抱えている方が多く、その一つに視力が低いという症状があります。泉水さんも視力検査では右目が0.1で左目が0.2。
光を受けて映像に変換する網膜の形成が不十分なため、通常の近視などの人であれば眼鏡やコンタクトレンズで視力矯正ができますが、アルビノの患者は眼鏡などによる矯正がほとんどできません。弱視と言われる状態で、学校では教室で一番前の席でも黒板の文字が見えづらいのです。
自宅で宿題をする際は書見台を使います。ノートやテキストの紙面数センチのところまで顔を近づけないと文字が見えないので、前かがみになって姿勢が悪くならないためです。
紫外線に弱く、色や特徴で相手を判断
外出の際も紫外線で肌が火傷のように真っ赤に腫れてしまうため、いつも日焼け止めクリームで予防しています。真夏でも長ズボンに長袖、つばのある帽子が欠かせません。
近所の友達と鬼ごっこをする時も、元気いっぱいに走り回っていますが、誰が鬼なのか泉水さんは顔で判断できません。服の色や体形・声の特徴が人を認識する際の大事な手がかりです。
スーパーに買い物に行った際に泉水さんとはぐれると、母親の清美さんが白い服を着ていた場合、他の白い服を着ている人に「ママ」と 言ってしまうなど、人違いが多いといいます。
清美さんは泉水さんが赤ちゃんの頃、周りの視線に悩みましたが「この子は悪くない。普通の赤ちゃんと同じように 親としてふるまうべきだ」と結論付けました。
泉水さん自身、髪色など外見がみんなと違うのは当たり前だと思っていても、こども同士のこと、心無い言葉を投げかけられ、傷ついたこともありました。
泉水さん「金髪野郎って言ってきたやつおったな。『しゃあないんじゃね?』って思っていたけど嫌だった。」
弱視への対応が幼少期から重要
アルビノを抱えながら大人になり、いま教育現場や社会生活への対応が重要と訴えている、愛知教育大学の相羽大輔准教授(40歳)。教育現場での障害者支援の在り方について研究しています。個人差がありますが、アルビノの人には光をまぶしく感じる「羞明(しゅうめい)」と呼ばれる症状があります。その為、相羽さんは研究室で照明はほとんど使わず、外出の際は遮光眼鏡や日傘が欠かせません。
遮光眼鏡を外すとまぶしさでほとんど目を開けられず、視野も狭くなります。キャッチボールをしてみると、遮光眼鏡をしているときは受け止められますが、外すと太陽の光がまぶしく視界上部が、霧がかったように真っ白になり、ボールが判別できず受け取れません。日差しが特に強い日は頭痛や吐き気を催すこともあるほどです。
相羽さん「視力が0.3や0.2あって障害者手帳を取れないアルビノの人はいっぱいいる。でも『まぶしい中でパフォーマンスを維持できるか』 となると絶対そんなことはないです」
相羽さんはアルビノの人たちの見た目については理解が広まる一方、弱視への理解が追い付いていないとしていて、特に教育現場での対応が重要だと話しました。
相羽さん「小さいお子さんで特に重要になってくる。間違いなく壁にあたるとすれば、板書が取れなくなる瞬間が絶対でてきますね。これは学力以前の問題」
私はじめじめ野郎じゃないから
実際にアルビノの人に限らず弱視の場合、授業内容が難しくなる中学・高校で黒板の文字が見えにくく、ついていけなくなるケースが多く見受けられるといいます。その対策として、簡単な操作で文字を拡大できるタブレット端末や片方の手が空く単眼鏡、自宅学習では拡大読書機などを積極的に活用することが必要だと相羽さんは訴えます。
小学5年生の泉水さんも、これから勉強が難しくなってくる時期に差し掛かります。母親の清美さんは進学や就職への不安はあるとしつつも病気を理由にやりたいことを諦めないでほしいと思っています。
清美さんは「やりたいことが出てくると思うんです。それを最初に『自分が弱視だから諦める』というのではなくて、チャンレンジして本当にダメだったら諦めてまた次を考えればいいんじゃないか」と語ります。
病気を理由に落ち込まず明るい泉水さんに救われていると話す母親の清美さんに対して、泉水さんは「私はじめじめ野郎じゃないから!」と明るい笑顔で力強く言い切りました。
CBCテレビ「チャント!」4月11日の放送より。