“地域の足”確保へ 名古屋市の交通空白地で実証実験 1日の利用者は約9人 現状打破へ住民らが取り組む

名古屋市内にも交通空白地 解消へ模索する地元まちづくり団体
名古屋市内で課題となっている「交通空白地」で、“地域の足”を確保しようと地元のまちづくり団体が立ち上がりました。
名古屋市港区の西福田学区。最寄りのバス停から500メートル、最寄りの駅から800メートル以上離れた「交通空白地」が点在する地域です。こうした「交通空白地」は全国的に問題となっていて、人口200万人を超える名古屋市も例外ではありません。

西福田学区で2025年8月から始まったのは、時刻表ではなく、利用者の予約に応じて車両を運行する「デマンド交通」の実証実験です。地域の中に約40カ所のバス停を設置。利用者は乗り降りするバス停と時間を指定して電話やインターネットで予約します。予約情報をもとにAIが効率的なルートを導き出し、運転手は時間になったら指定されたバス停へ向かいます。
利用者:
「80歳ちょっと前に(免許を)返した。(Dバスを使って)コミュニティーセンターに行った。便利で良かった」
「(交通手段が)これか歩きしかないので、できるだけ使いたい」
この取り組みは、名古屋市や名鉄タクシーなどでつくる共同体が実施しています。中心となっているのは、地域のまちづくり団体です。2024年に実施した1回目の実証実験では、1日当たりの利用者数が約9人。持続可能な交通とは言えない結果に終わりました。

この課題を解決すべく、まちづくり団体では今年、コミュニティーセンターに地域の高齢者を集め、お茶会や音楽で交流するイベントを開催。交通ニーズを作り出すことで1日あたりの利用者数は約2倍になりました。
西福田さいこうプロジェクト推進協議会 服部重盛会長:
「サービスを認識して行動になる(=利用する)までには結構時間がかかる。とにかくチャレンジ、チャレンジで、(継続運行に)近づけていきたい」
利用者の少なさが事業化への課題

運行の継続が可能になる利用者数の目安は1日あたり35人で、現状では届いていません。服部会長はさらなる利用促進を図りたいとしています。
名古屋市の担当者は…
名古屋市住宅都市局交通企画・モビリティ都市推進課 脇田裕二課長:
「ニーズや課題に応じた取り組みとしてはやはり地域主体で取り組んでいただくのが一番いいだろうと。当事者意識をもってできるだけ利用してもらう。ただ、なかなか地域だけで全てをやるのは難しいものですから支援制度を検討して、地域に伴走するような形で交通空白地の課題に取り組んでいきたい」
名古屋市は交通空白地の問題に取り組む地域団体への支援制度を、実証実験の結果を基に検討していくということです。
専門家「住民は“公共交通を利用して残す”意識が必要」

今回の実証実験に参加している名古屋大学の金森亮特任教授は、「地域交通の維持には、住民が“公共交通を利用して残す”意識を持つことが必要。地域住民が主導する取り組みは、住民の間で共感が得られやすく、公共交通を利用する意識をより高めるのではないか」などと話していました。
名古屋市内には西福田学区以外にも交通空白地がありますが、今回のように団体を作って課題の解決に取り組むというのも1つの方法かもしれません。