40年以上続いた「選挙は買い」の法則が破られた 少数与党では経済対策の実行力に疑問 専門家が解説

10月27日に投開票された衆議院議員選挙で、与党が過半数割れという歴史的惨敗を喫しました。その裏で、日経平均株価にも歴史的変化が。衆議院の解散前日から投開票日直前の日経平均株価の終値の変化を見てみると、1979年から過去15回はすべてプラスだったのに対し、今回はマイナスに。政界再編ムードが高まる中、今後の日経平均株価はどうなるのでしょうか。
みずほリサーチ&テクノロジーズのチーフ日本経済エコノミスト、酒井才介さんに話を聞きました。
衆院選で株価が上昇傾向な理由

――「選挙は買い」といわれる衆院選で、株価が上昇傾向になった理由は何ですか。
「選挙になると、与党野党いずれも、有権者の支持を得たいので家計や企業にとって負担を減らすような政策を主張しやすいんです。『減税をやります』『利上げはしません』『財政を出します』と。そうすると、マーケットは選挙が終わったあと、景気を刺激するような政策が打ち出されるだろうという思惑が広がるため、株価は一般的にプラスの影響が出やすくなっています」

――しかし今回は株価が下がっていますね。どのような理由が考えられますか。
「解散から総選挙投開票日までの経緯と、株価のデータの推移を確認すると、前半は円安も進んでおり、日本の株価は堅調でした。途中、外国の半導体関連企業の決算が事前予想よりも思わしくなかったため下落したことはありました。
選挙の結果が株価にあらわれ始めたのが10月下旬だと思います。『与党が過半数割れするのでは』という選挙の情勢調査が徐々に報じられようになりました。与党が過半数を取れないと経済政策を訴えても実行力がないのではないか、野党に否決され何もできなくなるのではないか、と政策の実行力に疑問符がついたため、株価にはマイナス材料になりました」
「減税」「日銀の利上げには慎重」なスタンス強まるか

――今後の政界再編の動きが株価に大きく影響を与えるのではないでしょうか。
「そう思います。選挙が終わったあと、今週の株価の動きを確認すると、株価は上昇しています。与党は負けましたが、政策政権の枠組みを維持するために野党と連携をしていくことが必要になります。
特に今回選挙で躍進をした国民民主党と連携するのではないかといわれています。国民民主が主張している政策も『消費税を減税する』『トリガー条項を凍結解除する』など、どちらかといえば減税、日銀の利上げには慎重であるというスタンスになります。
野党に配慮した経済政策の運営を行わざるを得ないので、先行きの政府の政策も財政は減税を含めて出していく、日銀の利上げには慎重であるというスタンスが強まると予想されます。それは景気に対してはプラスである、株価にとっても上昇しやすいと思います」
日本企業の負担が増える政策になる可能性

――アメリカの大統領選はどのような影響を与えると思いますか。
「アメリカの大統領選挙は日本経済、金融市場にも大きな影響を与えると思います。ハリスさん、トランプさんどちらが勝つかはまだ不透明ですが、どちらが勝っても、おそらくアメリカの国民を優遇するような政策を優先し、日本企業や外国企業に対しては関税を引き上げるような、日本企業の負担が増えるような政策がとられる可能性が高いと思います。
そうなると、自動車を含めて日本の輸出企業にとっては、トランプさんが勝って関税を大きく引き上げると、企業収益にはマイナスの影響があります。株価にもマイナス材料となりうるリスクがあるため、注意する必要があると思います」