
スクールカウンセラーに聞く 子どものSOSとの向き合い方 小中学生の自殺を防ぐには

去年1年間の全国での発生件数は、過去最多に。痛ましい出来事を防ぐために、私たちができることは?

「自分を傷つけていたら、いつか早く死ねるという感覚はあった」(過去に自殺未遂をした20代女性)
こう話すのは名古屋市に住む20代の女性。15歳のころから3年以上、自傷行為を繰り返していました。
背景にあったのは「激しい母親からの干渉だった」と話す女性。母親の代わりに、心のよりどころとしていたのは、祖父母でした。しかし、中学生の時に相次いで亡くなりました。
「自分の親も兄弟も信用できなかったから、周りの大人なんて誰も信用できないし、唯一信用できる人間がその2人だったから、余計に(つらかった)。自分が死んだら、一緒の場所に行ける、味方がいるって考えはあった」(過去に自殺未遂をした20代女性)
このころから、自分を傷つける行動が始まり、エスカレート。しかし、ある施設の先生との出会いが、女性を大きく変えることに。

「1人の先生に出会って、『自分の体に傷をつけることに価値はないけど、傷をつけなかったら価値は生み出される』と聞いて、傷つけなくなった」(過去に自殺未遂をした20代女性)
女性は、この先生の言葉に救われたと振り返ります。死にたいという気持ちはだんだん薄まり、いつしか消えていました。
いまは、生後10カ月の男の子の母親です。明確な目標もできました。
「目標とか好きなこととか、それをやり続けると気づけば生きてるずっと、となる
。すごく必死で気づいたら毎年誕生日が来てて、今も気づいたら子どもがいて、とりあえずこの子を二十歳まで成長させるという目標にたどりついちゃった」(過去に自殺未遂をした20代女性)

名古屋市に住む40代の男性は19歳のころから2度、自殺未遂を図りました。
男性は、小中学生の時にずっと「いじめ」にあっていたといいます。しかし、家族に相談できる状況ではなく、次第にふさぎこむように…。
「いじめのことを言えるような雰囲気ではないです。仮に言ったとしても、自分が怒られる。お前が悪いからそういうことになっているんだと決めつける親だった。生まれた時からのさまざまな家庭環境もそうだし、小学校・中学校・高校生活の出来事とかが複合的に全部関連していることが分かった。それが重なってそういう行為(自殺未遂)をしてしまった」(過去に自殺未遂をした40代男性)
男性を救ったのは、様々な問題を抱える子どもを支援する団体。男性はいま、仕事をするかたわら、「救われた経験」をもとに子どもの悩みに向き合う活動もしています。
「いろんな悩みを聞いてくれたりとか、自分のつらい経験を聞いてくれたりとか、本当に親身になって聞いてくれた。おそらく(支援を)死ぬまで継続していきます。本当に言えるのは、自分と同じような思いというか、苦しい思いをさせたくないだけですね」(過去に自殺未遂をした40代男性)
増え続ける子どもの自殺

警察庁と厚生労働省の調査によりますと、去年1年間に起きた小中高生の自殺者数は全国で529人。前年から16人増え、過去最多を更新しました。
なぜ、子どもの自殺が増え続けているのでしょうか。名古屋市内の中学校で生徒の悩みと向き合うスクールカウンセラーは、キーワードとして「新型コロナ」と「SNS」を挙げています。
「コロナ禍を経てSNSやネットとつながる時間が多くなった。(SNSやネットに)だんだん入りすぎてしまって、自分自身を装ったり、ウソをつく自分を演じたりして、“自分自身って何だろう?”と心の葛藤を抱えることが増えてきているのかな」(名古屋市立中学校 スクールカウンセラー)
一方、時期でみると、9月1日をピークに8月後半~9月前半にかけて、子どもの自殺が多い傾向がみられます。夏休みが終わるこの時期、私たちにできることは?
「(2学期が)だんだん近づいていく中で、体調に出ることもある。頭痛い、おなか痛いとか、そういうところが出てきた時には、そこで無理をさせるのではなく、何か変化があれば“どうしたんだろう?”と声をかけて話を聞いてもらうといい」(名古屋市立中学校 スクールカウンセラー)
「変化する前はネガティブな気持ちが出てきて当たり前。“学校行くの大変なんだね”とちゃんと受け止めてあげて、否定せずに子どものことを見守ってあげることが大切」(名古屋市立中学校 スクールカウンセラー)
自殺未遂を経験した当事者も、周りへの相談が大切だと話します。
「誰か一人を試しに頼ってみるのもありかな、誰でもいいから」(過去に自殺未遂をした20代女性)
「勇気を持って、相談機関に連絡してほしいですし、近所のおじさんおばさんでもいいので、悩んでいる事とか苦しんでいる事とか、すぐ助けを求めてほしいですね」(過去に自殺未遂をした40代男性)