
「ごんぎつねの里」静かに見守って 知多半島に戻ってきたキツネたち 背景に豊かな竹林 愛知・半田市

童話「ごんぎつね」の里に、キツネたちが帰ってきた―。
愛知県半田市は児童文学作家の新美南吉が生まれ育った地。代表作「ごんぎつね」は、小学校の国語の教科書にも掲載されることが多い、児童文学の金字塔とも呼べる作品です。
「ごんぎつね」を生んだ南吉の故郷の半田がある知多半島。そこに生息していたキツネは1950年から60年ごろに絶滅したとされていましたが、この里で再び姿が多く見かけられるようになってきたといいます。
地域絶滅したキツネを、豊かな竹林が再び呼び寄せる

日本福祉大学の福田秀志教授によりますと、知多半島のキツネは「地域絶滅」に追いやられていました。地域絶滅とは、ある特定の地域で、以前は存在していた生物種が存在しなくなった状態を言います。キツネが地域絶滅した原因について、福田教授は感染症の拡大、宅地開発による生息環境の悪化などを挙げていますが、特定の原因はわかっていません。

キツネは縄張り意識が強く、作った巣穴から半径1キロメートルほどの範囲を単独で行動します。
11月から1月中旬にかけて迎える繁殖期にはペアを形成し、縄張りを離れて行動範囲の広げて3月から4月にかけて出産、子育てを行うといいます。

この時期のキツネにとって、隠れ家となりやすく、エサとなる野ネズミが多い野原が近くにある竹林は、重要な拠点になるといいます。
知多半島では1980年代、人の管理が行き届かずに放置される竹林が増えました。
住みやすい環境を求めたキツネが、繁殖期に県内の他地域から行動範囲を拡大し、竹林が多く草原の広がる知多半島に住み着いた結果、1990年代に半島南部で発見されたのをはじめ、今では半田市周辺で再びよく見られるようになったのではないか、と福田教授は指摘します。
「ごんぎつねの里」を再び失わないためにも、静かに見守って

再び「ごんぎつね」の里に戻ってきたキツネについて、福田教授は「近づいて触れようとせずに、静かに見守るべき」と呼びかけています。
知多半島のキツネは人里近い環境に適応しつつも、人目を忍んで暮らしています。警戒心が高く夜行性のため、夜から早朝にかけて活動します。
キツネにとって「人間が一番の脅威」であり、夜や早朝に車を運転する場合には、キツネの急な飛び出しへの注意が必要だということです。
福田教授は「南吉が物語を描いた地に、いなくなったキツネがまた戻ってきたのは、里の自然が復活しつつある証。地域が誇る資産や魅力の豊かさとして、多くの人々に受け止めてほしい」と話しています。