危ない「クマ接近」を知らせるのはAI 岐阜・奥飛騨のクマ牧場の画像でAIが学習 精度向上へ

全国でクマの目撃情報が相次ぐ中、名古屋の防犯カメラメーカーが、100メートル先のクマを検知し、光と音で警告するシステムを開発しました。開発に生かされたのは、自動車産業で知られる愛知で培われたAIの技術でした。
モニターに映ったクマをAIが認識

モニターに映ったクマの映像をカメラで撮影すると、画面の中のクマをAIが認識し、光と音で警告する「AI熊さんカメラPro」。クマとイヌの画像を並べても、きちんとクマだけ認識できます。
カメラの価格は業務用で43万7800円、家庭用は12万3200円です。

レッツコーポレーション 情報機器事業部
福田 伊佐央係長:
「クマによって外に出るのが怖いといった人たちが、安心して生活を送れるようにしてもらえたらいいなと思っています」
クマによる人的被害は約200件(11月19日現在)

全国で相次ぐクマの目撃情報。クマによる人的被害の報告も約200件にのぼっています。そんなクマの接近を未然に知らせる「AI熊さんカメラPro」。名古屋市内の街中にカメラを設置。カメラから10メートル、50メートル、100メートルの距離のところにクマの写真を置いて、認識できるかどうか調べました。

10メートル、50メートル……100メートルにしても、クマだと認知できました。「AI熊さんカメラPro」は、最大100メートル先のクマでも認知して、光と音で接近を知らせることができます。
車種やナンバーなどを瞬時に認識できるカメラを開発

開発したのは、名古屋市にあるレッツコーポレーション。防犯用など特殊なカメラの製造販売を手がけています。
例えば走行中の車の車種やナンバー、色などを瞬時に認識できる「5Mグローバルカメラ」。道路での違反車両の取り締まりなどに採用されています。

走り過ぎる車の車種や色、さらにはナンバーまで、残らず特定できます。

赤外線を使っているので夜でもナンバープレートを特定でき、その精度はなんと97パーセント。使われているのはAIの技術です。必要なのはさまざまな角度の車の画像データ。モデルチェンジやオプションなどでデザインが変わってしまえばその分も必要です。
約300車種に対応するため、これまでに20万枚以上のデータを学習させました。このノウハウを、クルマではなく、クマに応用したのが、このカメラです。
クルマに使っていた技術をクマに応用

問題はクマのデータの確保でした。そこで、岐阜県奥飛騨のテーマパーク「クマ牧場」に向かい、膨大な数のクマの画像を採取して、AIに学習させました。
レッツコーポレーションによりますと、90%~95%にまで認知精度を上げることができたといいます。
レッツコーポレーション 情報機器事業部
福田 伊佐央係長:
「学習データとしてはもっとほしいと感じていて、より多く入れることでこの商品はもっとブラッシュアップされて精度ももっと上がるかなと考えています」

カメラは11月7日に予約の受付を開始。すでに東北地方を中心に、宿泊施設や大学などから受注がありました。年間1000台の販売を目指しています。
日本経済新聞社 名古屋支社
竜田 菜美子記者:
「AI熊さんカメラは膨大な量のデータの蓄積が必要ですが、社員総出で開発にあたり、年内の製品化に間に合わせました。ニーズが高まっているタイミングを敏感に察知して、柔軟にそれに応える姿勢が製品の価値を高めた形です」





