イタリアの古生地と着物生地を融合 “使われなくなった”生地で作る巻きスカート「レナクナッタ」が人気
全国に約240ある国指定の伝統的工芸品。しかし、どこも「後継者不足」や「顧客の高齢化」など共通の課題を抱えています。そんな中、伝統的な高級生地を使い、20代から40代の女性をひきつける異色の服飾ブランドがあります。人気の理由を取材しました。
渋谷の販売会で注目の巻きスカート
東京・渋谷の喧騒から離れた路地裏の雑居ビルで、1日限定のアパレル販売会が開催されました。そこで注目を集めたのは、鮮やかなカラーと大胆な花柄が特徴の巻きスカートです。20代から40代の女性客が多数来店。1枚4万円ほどと高額にもかかわらず、オープンから2時間で81万円を売り上げました。
デザイナーの大河内愛加さんが手がけるブランド「レナクナッタ」は、イタリアの売れ残り生地(デッドストック)と、日本の着物生地を使って作られています。ブランド名は“使わレナクナッタ”から取られていて、売れ残った生地や伝統的な生地を日常着に落とし込み、新たな価値を提供しているのです。
京都での製作と丹後ちりめんの活用
「レナクナッタ」の運営会社「Dodici」は京都市内にあります。会社設立のきっかけは、10年以上暮らしたイタリアでの経験にありました。イタリアに根付く、古い物を特別な物として愛でる文化に影響を受けたのです。
さらに「レナクナッタ」には「作られなくなった」という意味も込められています。
大河内さんは高級織物「丹後ちりめん」のメーカー・臼井織物と手を組み、ポリエステルを使った新しい丹後ちりめんを開発しました。丹後織物工業組合の統計によると、1973年当時は920万反あった丹後ちりめんの生産量は、2023年には15万反に減少。そこで臼井織物は、本来使用する絹ではなくポリエステルを使った丹後ちりめんを開発しました。レナクナッタとタッグを組むことで、日常着の巻きスカートとしての用途を見いだしたのです。
臼井織物 臼井勇人さん:
「もともとカーテン用に作ってたので、まさか洋服になるとは思っていなかったですね」
ブランドのストーリーと消費者への共感
日本経済新聞社 京都支社 足立佑太記者:
「レナクナッタは、オンラインの製品ページで、商品だけでなく製作背景や歴史を発信しています。それにより“モノ消費”から“コト消費”への流れをうまくキャッチして、決して安くはない価格帯でも、多くの消費者にストーリー性が共感されて売れる状況をつくっています」
大河内さんが手がける「レナクナッタ」は、イタリアと日本の伝統を現代の日常に取り入れる新しいファッションブランドとして、多くの人々に愛されています。
大河内さん:
「ブランドでありメディアである、というのをすごく心がけていて。お客さんが伝道師みたいな形で広めて、その人のコミュニティーの中でまた広がって、文化が広まっていったらいいなと思います」