「現地マーケットを知ることが大事」仏壇や染物など伝統工芸技術を海外に売り込み起死回生へ

現在、海外市場進出に関心がある中小企業は全国の会社の3割以上に及ぶといいます。仏壇づくりや染物など、この地方の伝統工芸品を海外に売り込もうと、官民が一体となって取り組んでいます。今回は、中部地方の伝統産業を海外に売り込むためのイベントを取材しました。
名古屋の伝統技術を活かした新商品

名古屋市熱田区にある岩田三宝製作所は、江戸中期から続く名古屋で唯一の三宝製作所です。三宝とは、神事などでお供え物を載せる台のこと。ヒノキを使って、のみやかんなで継ぎ目を削り、板をぴったりと組み合わせます。緻密な技術で製作されていますが、その需要は減少の一途をたどっています。

岩田三宝製作所 岩田康行さん:
「この技術を残すために、新しいものを作らなければいけないというところから、技術を残すために新しいものをやっています」

そこで三宝づくりの技術を活かして作られたのが、木曽ヒノキの弁当箱です。木目が詰まった強度の高い素材を使っているのでとても丈夫。気密性が高いのも特徴の1つです。蓋に空気の逃げ道を作ることで、スムーズに開け・閉めができるようになっています。
海外市場進出を目指す企業の挑戦

岩田さんは1月初旬、名古屋市内で開催された中部経済産業局が主催のイベント「職手継祭プロジェクト」に参加していました。同イベントは、中部地方の伝統工芸品などの海外展開を支援するもの。イベントで登壇した「カネコ小兵製陶所」伊藤克紀さんの話に耳を傾けていました。

岐阜県土岐市の陶磁器メーカーであるカネコ小兵製陶所は、美濃焼の技術を進化させて「ギヤマン陶」という商品を開発。フランスのブランド「ディオール」にも認められ、世界に販路を広げています。
しかし、海外展開にはさまざまな失敗もありました。
カネコ小兵製陶所 伊藤さん:
「フランス人はカフェオレを飲むから『カフェオレボウルを作りました』と言ったときに、非常にけげんな顔をされて。『私たちは世界中からいいものを探してフランス人など世界に売っています』『あなたたちは、フランス人に迎合してほしくない』と。そっと隠して『すみませんでした』と謝った記憶があります」
日本の技術と文化を尊重することの重要性を強調しました。
韓国市場での反応とアドバイスをもらう

イベント会場で岩田さんが声をかけたのは、韓国の大手百貨店の役員、チョ・ギュコォンさんです。岩田さんはヒノキで作った花の形のアロマディヒューザーを売り込みましたが、「珍しいですけど、(韓国人は)好きではないと思いますね」と反応はいまいち。そこで、弁当箱の写真を見せたところ、チョさんから「韓国ではお弁当箱が流行っている」という意外な反応とアドバイスをもらいました。

チョ・ギュコォンさん:
「韓国の食べ物ってキムチとか色がある。白い食器が好きなのは、全部色があるからなんですよ、食べ物に。ナムル、キムチ。ちょっと水分がある。それがこういった(白木の)ものでは、ちょっと汚くなるんじゃないかなと思います」
岩田さん:
「そういうことですね。木のそのままですと、僕たちが作るときも、例えばお弁当箱なんかでもやっぱり臭いがついたりとか。コーティングはしっかりさせてもらっています」
今後の展望と新たな市場への挑戦

同イベントを通して岩田さんは「まずは現地のマーケットのニーズを知ることが大事」と感じ、現地の協力会社と一緒に商品開発を進めたいと意欲を示しました。現在、韓国とは別に、フランスにも弁当箱を売り込む計画を進行しています。
日本の伝統技術を活かした新商品の海外展開が、今後どのように進展していくのか注目が集まります。